小説:博士の異常な乳首

今日,博士が,人口乳首の開発に成功しました.いきなり人口乳首といわれても,ピンとこない方のために,助手のわたしが,少し説明しましょう.

形態は,乳首そっくりのピップエレキバンといった感じで,それを貼ると,仕掛けられた 2.8 fm の繊毛センサー( 1 fm = 10-15 m )が,まるで球根の根のように,体内のいちばん近い海綿体へと伸びます.そして,そのエレキバンをいじれば,人体のあらゆる部位で,乳首と同じような快感をえることができるのです.

わたしは,仕事さえすれば給料が入るので,特に気にしていませんが,この発明をきちがいじみたものだと思う方も,多いことでしょう.博士は,完成したときのために,壁や床をクリームで塗りたくった部屋まで,しっかり用意しています.もちろん,全身に人口乳首をつけて,その部屋でゴロゴロ転がるためです.

そしていま,博士は乳首だらけの体で,その部屋に入っていきました.おもてのわたしのところまで,喜びとも,悲しみともつかない,博士の絶叫が,壁をとおして聞こえてきます.

博士が,なかなか部屋から出てこないので,心配になって見にいくと,気味の悪い笑みを浮かべながら,気絶していました.急いでわたしが駆けつけると,博士は弾かれたように起きあがり,わけのわからないことを叫んでから,研究室の機械を,近くにあった鉄棒で叩きじめました.

それから博士は,動力室(この研究所は自家発電で電力の補充をしています)の方へ行ったので,わたしは恐ろしくなって,逃げだしました.しばらくして,研究所は大きな爆音とともに,消えてなくなりました.

実験のデータやサンプル,試作品なども,爆発に巻きこまれ,すべて焼失しました.わたしは,これでよかったのだ,と思います.博士のように貼用して,錯乱してしまう人が増えれば,軍隊に悪用され,危険な兵器として使われることも,あったかもしれないのですから.

ひとり残されたわたしは,煙の立ちのぼる研究所の残骸から,ドリフの爆発コントみたいな髪形をした博士が,ひょっこり現れないことを,ただただ,祈るばかりでした.

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Evernoteに保存Evernoteに保存