牛久大仏の見仏記

茨城県牛久市にある牛久大仏に行ってきた。

世界最大の全高120mブロンズ像はあまりに巨大なので、遠く離れた場所からでも姿がよく見えると聞いていた。到着した牛久駅からはさすがに見えなかったが、バスで向かう道中は、いつ見えるか、いつ見えるかとわくわくした。いよいよ大仏の頭がちらっと見えた瞬間、バスの乗客たちにどよめきが走った。期待していたのは私だけではなかったのだ。この人気ぶりはもはやスーパースターのそれである。

ほかに大きな建造物のない広い場所に、巨大な牛久大仏がそそり立っている光景は、はっきり言って異常である。なにも知らない外国人が、いや日本人であっても、いきなりこのスケールの巨像を目の当たりにしたら驚くだろう。巨大物恐怖症(メガロフォビア)の方は不意打ちをくらったら気絶してしまうかもしれない。

アニメまんが映画でよく見るあの巨大なものたちを私は思い出していた。比較的大きそうなウルトラマンでさえ全長40mほどである。牛久大仏はその三倍の120m。どうかしている。この迫力はなかなか写真では伝わらないので、ぜひご自身の目で確認していただきたい。

大仏が立っている牛久浄苑は「売り」である大きさの説明がくどいほど多い。まずギネスブックに登録されたという情報と、比較図が石に掘られている。比較されているのは、自由の女神と、奈良の大仏である。

また顔の大きさを体感するために、頭部だけの仏像とパネルに「大仏様のお顔は、この模型1000個分のボリュームに相当します」と書いてある。たしかに大きい。私たちは人の姿をした全長120mのものを見慣れていない。そのため距離感がかなりおかしくなっている。なるほどこのパネルによって、遠く離れた牛久大仏がどれほど大きいのかがよくわかるのである。

案内地図には「奈良の大仏が手のひらに乗ってしまう、世界一の青銅製大仏」と註釈がある。孫悟空がお釈迦様の手の上に乗っているイメージは一般的だと思うが、小さい大仏が大きい大仏の手のひらに乗っている「大仏オン大仏」のイメージは、少し滑稽だが新鮮だと思った。

原始仏教では他人と比較して思い上がることを「慢」という煩悩だと教える。牛久大仏の大きさを他のものと比較して「売り」にしたいという人間の対抗意識はその「慢」に近い。しかし、そんな人間的な煩悩とは無縁に、牛久大仏は超然とそこにおわすのである。

大きさが120mともなると、見上げれば大仏のまわりは空と雲ばかりになる。しばらく見上げていると、雲がゆっくり動いているために、まるで大仏が動いているような錯覚を起こす。この感覚は面白かった。錯覚とわかっていても、つい「え、動いた?」と思ってしまう。人によっては大仏が倒れてくると感じることもあるだろう。

牛久大仏は中に入って胎内拝観できる。中には、エアコンのついた近代的な施設があり、大仏がつくられるまでの歴史パネルの展示や、写経ルームなどがある。牛久大仏の胸に開いた3つの穴から下を眺めることができる。

写経ルームはたくさんのライトテーブルがずらりと並んでいた。私の職場であるアニメ・スタジオの風景によく似ている。70席ほどあるらしいので、もし仏教に関連するアニメ作品を制作することになったら、許可を取ってこの場所を使わせてもらうのも面白いだろう。

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