北京旅行記 – 4 観光名所のことなど(下)

万里の長城と男坂

万里の長城は、北京の北部から東北部にかけての山岳地帯に、まるで龍のようにうねうねと設けられている。ご存知のとおり、この長城は、北方の騎馬民族や他国の侵入を防ぐための城壁で、紀元前に各地につくられ、それらを秦の始皇帝がつなぎ合わせて今日に至る。

一口に長城といっても、北京中心部からは、八達嶺長城、金山嶺長城、慕田峪長城、司馬台長城、居庸関長城、の5ヶ所ほど登るところがある。それぞれ特色があるので、なにが見たいのかをしっかり調べてから行くことをおすすめする。わたしたちは特にこれといった要望はなく、最後の居庸関長城にした。これが失敗だった。

のちに調べたところ、居庸関長城は防衛の拠点であり、また歴代の兵法家が攻略に悩んだほどの急勾配で知られている場所だった。息を切らしながら険しい男坂(*1)を登り、悠久の中国に思いをはせた。

(*1)男坂……おとこざか。男の気骨を試されるようなつらい坂道のこと。

階段は段ごとに高さがちがう

階段は段ごとに高さがちがう

上の写真にあるように、階段の途中には一定距離をあけて、見張り台や兵士の住居に使われていた城楼が建っている。居庸関長城の城楼はぜんぶで6つあり、わたしたちは時間と体力の都合で5つ目までしか登れなかった。 降っているとき、知らないおじさんから韓国語で話しかけられた。おそらく「5つ目の城楼まで来たのに最後まで登り切らないのか」と言われたんだろうと思って、時計を指差し、英語で「わたしたちには時間がありません」と答えた。

いま考えると、このおじさんは、ちがう質問をしていたのかもしれない。

「ゴルゴ13はいま何巻まで出てますか」

「人類の未来についてどうお考えですか」

まさかとは思うが、韓国語には暗いので、はっきりと断言はできない。もし前者の質問だとしたら答えになっていないし、後者の質問だとしたら、わたしはずいぶん意味深なことを言ってしまったことになる。

「わたしたちには時間がありません」

景山公園

故宮博物院の北にある景山公園は、いただきにある万春亭から、72万平方メートルの故宮全景を一望できる。北京市内を四方から見下ろせる眺めは圧巻だった。

この景山は、明の時代に北京に遷都したとき、皇城の北は玄武の位置で山があるべきという風水にしたがってつくられた人口の山である。石灰を積んで山にしたという伝説が残っていて、煤山という異名もある。

万春亭には仏像があり、それが、どう見てもカンチョーしたあと指のにおいを嗅いでいるみたいだった。罰当たりな考えだろうが、その通りなのでどうしようもない。写真があるので、ぜひご自分の目で確かめていただきたい。

クンクン

クンクン

景山から降る途中の休憩所に、バイオリンとギターの流しがいた。ぼくと連れが覗いていると、バイオリン奏者が「日本人ですか?」と訊くので、そうだと答えると、『北国の春』を弾いてくれた。まわりの観客も中国語で歌いだす。 演奏自体は優れたものじゃなかったが、孤独な旅人であるわたしたちに、こころを通わせようと歩み寄ってくれたことは、とても嬉しかったし、感動した。

残念ながらわたしたちは『北国の春』の歌詞を知らず、合唱に参加することができなかった。もしぼくがコロッケや千昌夫だったら、その気持ちに応えられるのに……と思うとくやしかった。

たぶんコロッケや千昌夫になりたいなんて思うのは最初で最後だろう。

入口から見た景山公園

入口から見た景山公園

いい顔のふたり

いい顔のふたり

北海公園

景山公園の西隣にある北海公園は、面積の半分以上が池(北海)で、そこに浮かぶ瓊華島、南端の団城に分かれている。中国の古代神話の仙境をイメージしてつくられたらしく、建物や風景はとても美しかった。この北海は、夏はボート、冬はスケートを楽しむことができる。

わたしたちが行ったのはちょうど、ボートに乗るには池が凍りすぎ、スケートをするには融けすぎている半端な時期だった。みなさんが北京に行く際は、ぜひ気をつけていただきたい。

瓊華島の中心に建つチベット式仏塔の白塔は、北海公園のシンボルになっている。塔の前にある永安寺もチベット仏教(ラマ教)寺院で、北京では珍しい様式の建築物を見ることができる。

また、元の時代にはフビライ帝との交流も盛んで、チベット仏教の活動の中心地になっていた。仏典や書籍の翻訳もここで行われていたらしい。

北海公園の入口から白塔が奥に見える

北海公園の入口から白塔が奥に見える

公園入口の売店で色の薄いトウモロコシを売っていた。トウモロコシは「唐黍(とうきび)」と書くこともあるので、「餅は餅屋」にしたがって買って食べてみた(原産はアフリカのはずだが)。これが、とんでもなくまずかった。 つと状のなかにひとつひとつ炊いた米粒を入れたようなモチモチした感じだったが、米のように噛んでも味が出てこなくて、いろいろな意味で no taste 。醤油があれば少しは美味しく食べられたかもしれない。

アメリカ人がこれを食べたら shit! と言いながら地面に叩きつけるだろう。

ただ、この食感でトウモロコシが穀物であることをあらためて実感できたし、コーンフレークはこれを引き伸したものなんだなとわかった。怪我の功名。とでも考えなければやってられない。

光龍門から白塔を望む

光龍門から白塔を望む

玄奘法師の像

玄奘法師の像

広い北海公園をぶらぶら歩いていたら、ある寺院のような建物(名前は失念)のなかに、たくさんの法師の像が並べられていて、西遊記でおなじみ玄奘法師の像もあった(右上の写真)。

わたしが勝手に思い描いていた「玄奘法師=夏目雅子」のイメージは崩れたが、本物の顔をおがめてとても嬉しかった。

わりと太り気味なのはショックだったが。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Evernoteに保存Evernoteに保存