北京旅行記 – 3 観光名所のことなど(上)

名所めぐりの前に

最近の北京は、政策のもとに模範都市としての開発が盛んで、いろいろなところが工事されている。古い集落や民家が取り壊され、地下鉄、高速道路、高層ビルなどが次々につくられている。

そのため経済的にも発達したが、都市と農村の経済格差はひどくなり、日本円にしてひと月一万円くらいの稼ぎしかない人々もいるらしい。職にあぶれて、スリ、強盗、置き引き、かっぱらいなどを行う人もいて、治安は日本のそれとはだいぶちがう。

ホテルを出てぶらぶら歩くと、見事なビル郡のすぐとなりに古いレンガ造りの住宅が見られたりする。経済格差のコントラストはこんなふうにして実感したのだった。

中国というと露店にある屋台で食べものが売られているイメージがあり、ぜひ食べてみたいと思っていたのだが、ガイドの話によると、それは低所得者が食べるものであって、現地の人でもふつうは利用しないらしい。

そのての屋台は粗末な食材でつくった料理を洗ってない食器で出したりするので、お腹をこわすかもしれませんよ、と注意された。

余談になるが、そのガイドから北京では浮気が流行っていることも聞いた。ふつうのサラリーマンでも、たいていひとりは愛人がいるらしく、いないと魅力のないヤツとして同僚に笑われるというのだ。

それを聞いて、私が「すてきな文化ですね」と皮肉まじりに答えたら、いっしょにいた連れ(恋人ともいう)は恐い顔をしていた。

取り壊された家

取り壊された家

レンガ造りの民家

レンガ造りの民家

片やマック、吉野家もある

片やマック、吉野家もある

天安門とその広場

開発が進む北京でも、故宮をはじめとするさまざまな文化財は、細部を修復するなどしてしっかり保存されている。海外からの観光客も多く(私もそのひとりだが)、何語をしゃべっているのかわからない外国人をよく見かけた。

英語圏の人にたのんで写真を撮ってもらったら、シャッターを押すときのかけ声に「イー、アル、サン」と言われた。我々がアメリカ人とイギリス人の顔を区別できないように、彼らも我々を中国人だと思っていたらしい。

天安門および天安門広場は、本当に巨大でだだっ広かった。広場は面積が40万平方メートルあり、世界最大の空間と言われているが、馬鹿みたいに広いだけで、これといった見どころがあるわけではない。これをつくった人の偉大さには感動して声も出ない。

広場には日光や風をさえぎるものがないので、夏は暑く、冬は寒い。寒かったのですぐ故宮に移動した。

世界的に有名な天安門。大きな毛沢東の肖像画が飾られている。

世界的に有名な天安門。大きな毛沢東の肖像画が飾られている。

その直線状にある天安門広場。広場の夏の気温は50度以上らしい。

その直線状にある天安門広場。広場の夏の気温は50度以上らしい。

故宮博物院

北京でいちばん有名な観光地はここだろう。映画『ラストエンペラー』の舞台でも有名。高さ32メートルの城壁と、お堀の護城河にぐるりと囲まれた城で、城内の面積は72万平方メートル、約9千間の部屋がある。

元・明・清の三代王朝の宮城で、紫禁城と呼ばれる。この紫は「天帝の座の紫微垣(しびえん)」の意味である。と広辞苑に書いてあった。

故宮は南の「外朝」と北の「内廷」に分かれている。入口の午門から入ってすぐの外朝は、大きな政治的行事を行うところで、出口の近くにある内廷は、日常勤務を執ったり、皇帝や皇后貴妃たちの住む後宮がある。

ちなみに内廷の宮殿には皇帝のおメカケさんが3千人ほど住んでいて、皇帝は一日ごとにちがう女性と「夜のお勤め」をしていたらしい。ガイドが言うには、そのせいでみんな早死にしました、とのこと。

皇帝の夜の激務を想像すると生つばが出てくる…なんてことはまったくないが、つくづく人間はすてきな生きものであると思わずにはいられない。

ところで、これも働きすぎの過労死になるのだろうか。

外朝のはじめにある太和門

外朝のはじめにある太和門

外朝は政治的行事の場所だけあって広大なスペースがとられている。とくに太和門から太和殿につづく広場は、『ラストエンペラー』で、たくさんの王侯貴族や文武官たちが一斉にひれ伏したところである。

上の写真の太和門は、中国最大の宮殿建築の木造門だが、火災で焼け落ちたあとに再建されたもので、当時の美しさは損なわれているらしい。

太和殿も、落雷と、李自成ひきいる農民軍の放火で2度も焼け落ちている。木造は火に弱いのである。そのため故宮には、貯水用の巨大なカメがいろいろなところに置いてあった(現在は使用されていない)。

それから外朝は中和殿、保和殿とつづく。いずれも装飾は美しく、ガイドによれば、装飾をつくる際、その職人が少しでも失敗すると殺されたらしい。職人が命をかけた装飾は、現代でも変わらず輝きを放っている。

内廷に入ると建築物の装飾に少しだけ生活味が出てくる(ような気がした)。坤寧門を出ると、そこから宮廷式庭園の御花園になっていて、さまざまな植物やめずらしい石が集まり、ここで皇帝は四季を楽しみ、遊んだようである。

故宮は、ひとつの建物から次に移るだけで10~15分はかかるのに、トイレが少ないないので、もよおしてきたらためらわずに行っておいたほうがいい。漏らしてしまえばこれが本当の失禁城、なんて冗談はともかく、72万平方メートルはダテじゃないのである。

装飾は数と繊細さで圧倒する

装飾は数と繊細さで圧倒する

御花園にある岩山

御花園にある岩山

前回でもふれたが、中国での買いものは充分に注意すべきである。しかし、私は休憩によった故宮の土産物屋でぼったくりにあった。しかも店員はテレビショッピング顔負けの海千山千で、ほいほい話を聞いてるうちに、なんと掛軸を買わされてしまったのである。

その周到な手管をぜひ解説したいところだが、そんなことができるなら、そもそも掛軸は買ってない。日本円で一万円もする掛軸など絶対に買ってないのである!(涙まじりに)

しかし掛軸にはこれと決まった価格がなく、自分が気に入っただけの評価の値で買えばよろしいと『地球の歩き方』に書いてあるので、正確にはぼったくりとは言えないかもしれない。ただ、掛軸を見るたびに口惜しさがこみ上げるので、実家に土産として送っておいた。

良くも悪くも、この旅行で最大の思い出になったことは言うまでもない。しばらくは実家に帰って掛軸を見るたびに赤面するだろう。

いまでも連れには「かけじく、かけじく」と馬鹿にされている。

故宮外側の南から北への城壁。パースの勉強になりそうな直線。

故宮外側の南から北への城壁。パースの勉強になりそうな直線。

ラストエンペラーの甥、ちょうど練習中だった。

ラストエンペラーの甥、ちょうど練習中だった。

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