本を購入、図書館の生活

柴田鉄治/外岡秀俊『新聞記者 疋田桂一郎とその仕事』、いましろたかし『化け猫あんずちゃん』を購入。前者は杉並区の図書館の予約がぎっしりだったので、やっぱり人気があるな、買ってしまうか、と。後者はファンなので。

しかし、自転車圏内に新宿区立図書館中野区立図書館杉並区立図書館武蔵野市立図書館西東京市図書館とざっと40館以上の図書館に囲まれた生活をしていると、なかなか本を買わなくなってしまいます。

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カテゴリー: 書籍

「人気エントリー」とアフィリエイトをつくる

一見さんが膨大なログを読まなくてもいいように、「人気エントリー(評論)」と「人気エントリー(雑記)」をつくりました。横のならびにあります。読んでほしいもの、読むとわたしの基本的なスタンスがわかるものを選びました。ここらへんに人気(ヒトケ)があるとうれしい。

Janicaのことを書いたエントリーはアクセス数がべらぼうに多いんですが、ぬるぬるの内容だと自分では思うので、このなかには入れませんでした。

下に同じものを載せておきます。ときどき入れ替えるかもしれません。

「人気エントリー(評論)」
ドラえもん のび太の道具問題
『人狼』のイメージの連鎖とレイアウト技術
アニメ『赤毛のアン』――刈入れどきを待つごとく
八月のまとめ『時をかける少女』と『ゲド戦記』
小説『スカイ・クロラ』を読んで映画を予想する
高畑勲の「アニメ・映画・アニメーション」
映画『オマツリ男爵と秘密の島』を見た
映画『太陽』を見た
映画『死者の書』を見た(1/3)
『サザエさん』のセカンド・ステージ
細田守と食べものの物語
宮崎駿的な瞬間

「人気エントリー(雑記)」
すばやく言った
魔法を信じる男
いつか虹の向こうに
出崎統監督のちょっといい話
われ及川光博を発見せり
死につつある人のふるまい
ナナの夢
踊ろう、感電するほどの喜びを!
Manfred Mann
めちゃキャワイすぎ~っ!
ブルース

ついでに本とDVDのアフィリエイトもつくりました。中村元さんの『龍樹』をかなりがんばって高密度で要約&紹介してみたんですが、もう、大満足。よくやったと自分をほめてあげたい。

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龍樹
八宗の祖・龍樹の謎につつまれた評伝からはじまり、虚無主義や否定主義と誤解されがちな『中論』を説一切有部との比較をとおして「縁起―無自性―空」の流れで見直し、あらゆるものごとを空と結論づけつつ空の対象化を許さない空観が原始仏教の発展形でありながら回帰でもあることを証明した、仏教を知る上で避けて通れない歴史的な名著。

一息で読んでもらうために一文です。でも「説一切有部」を説明なしでわかるような人は、もうとっくにこの本を読んでいるかもしれませんね。売れたらおどろくなあ。ロングテールとかIT革命を実感できるような気がします。

カテゴリー: 雑記

長谷川眞理子『クジャクの雄はなぜ美しい? 増補改訂版』を読む

長谷川眞理子『クジャクの雄はなぜ美しい? 増補改訂版』を読みました。「雌による選り好み」を中心に性淘汰を考えていく本です。たいへんおもしろかった。

かた苦しいことばを使わない、わかりやすく論理的な文章で、楽しい豆知識を盛りこみつつ、性淘汰の大きな地図を広げてくれます。仏教学の『バウッダ』と同じように、これ以上ないってぐらいの完璧な入門書。ぐいぐい惹きこまれて、深夜のジョナサンでドリンクバーのお代わりもしないまま一気に読んでしまいました。

もくじ
序章 派手な雄と目立たない雌
第1章 性差はなぜあるのか?
第2章 同性間の競争と異性による選り好み
第3章 賢い選り好み
第4章 「美的センス」による選り好み
第5章 選り好みの進化
第6章 選り好みをめぐる疑問
第7章 雌雄の対立と葛藤
第8章 性淘汰の理論をめぐる論争

カブトムシの角は、オスどうしがメスを奪い合う「雄間競争」のために使われる。立派な角をもったカブトムシは、ほかのオスを木から落としやすく、繁殖する。そしてそのこどもにも立派な角が遺伝される。

ライオンのたてがみは、魅力をアピールしてメスに選んでもらう「雌による選り好み選り好み」のために使われる。立派なたてがみをもったライオンは、ほかのオスよりメスに選ばれやすく、繁殖する。そしてそのこどもにも立派なたてがみが遺伝する。

これがくり返されるうちに、カブトムシの角とライオンのたてがみはどんどん立派になっていった。「雄間競争」と「雌による選り好み」の性淘汰が、オスとメスの外見をわけた理由だった。

じゃあ、そもそもなんで性淘汰は起こるのか?

どんな動物でも、精子は小さくて数が多く、卵は大きくて数が少ない。オスは、小さくて数が多い精子をばらまくために、たくさん交尾しようとするから、メスを奪い合って争う。メスは、大きくて数が少ない卵をつくるのにエネルギーが要るため、たくさん交尾ができないから、よりよいオスを選ぼうとする。

ここまではテレビで動物の番組を見てる人ならおなじみの内容ですね。

メスの選り好みもいろいろです。自分のからだの大きさと同じくらいのオスを好んだり、ごちそうを運んでくれるオスを好んだり、立派な家をつくってくれるオスを好むような選り好みはわかりやすい。でも、クジャクの飾り羽のような美的センスの選り好みは、繁殖に関係してるようには思えないし、利益があるようには考えられないため、よくわかりません。

そこで、あれこれ仮説が立てられます。まずは「優良遺伝子説」からふたつ。

ハンディキャップ・モデル:派手な装飾は、ジャマになって食べものが取りにくく、捕食者に見つかって食べられやすい。オスはハンディキャップをものともしないことで、生存力と環境への適応度をアピールする。

しかし、尾の長いツバメは、飛びづらいためかエサは小さい虫しか取れず、羽は傷ついて折れやすくなります。これでは、とても生存力や適応度が高いとは言えません。

パラサイト・モデル:派手な装飾は、体調がいいときれいになることから、寄生虫(パラサイト)への抵抗力が高いことを示すアピールになる。食べものから摂取するカロチノイドは、免疫力を高め、装飾の色素になる。

しかし、グッピーの装飾であるオレンジ色のスポットは、免疫力どころか、逆に有害な遺伝子で死にやすくなることがわかってきました。

そこで、ハンディキャップ・モデルとパラサイト・モデルのふたつの仮説を、『系統樹思考の世界』でいうところのアブダクション、データによって検証していき、「よりよい説明を与える」新しい仮説が立てられます。

感覚便乗モデル:繁殖とは無関係な生きていくために発達した感覚を求愛のために使った。メスが視力や聴力などの「感覚」を発達させると、オスはそれに「便乗」して、飾り羽や複雑な鳴き声を使って気を惹こうとした。

生きていくために発達した感覚から、派手な装飾やディスプレイが生まれた、とする仮説です。トゥンガラガエル、ソードフィッシュ、ジュウシマツなどの近縁・共通祖先の研究から明らかになってきました。

ジュウシマツは複雑な歌で選り好みをするんですが、その祖先のコシジロキンパラも複雑な歌を好んだそうです。コシジロキンパラはもともと単純なさえずりしかしないので、声を録音して複雑な歌に加工して、メスに聴かせたらしいですよ。おもしろい実験を考えるものです。

ランナウェイ・プロセス:メスの「派手な装飾を好む」選り好み遺伝子と、オスの「派手な装飾」の遺伝子が対になって、相乗効果でどんどん装飾が派手になっていく。生存上の負担になったところで装飾の強調はストップする。

著者はランナウェイ・プロセスのたとえとして、ビクトリア朝時代のコルセットを上げています。男性がウエストの細さで選り好みして、女性は第12肋骨が変形するほどコルセットで胴を締めつけた。わたしは中国の纏足を思い浮かべました。これはジェンダーの話ではなく、みんながある形質を好むから、その形質をもたないと不利になり、生存に悪影響が出るまで形質が誇張されていく、というたとえですね。人文科学や社会科学ではなく、あくまで自然科学のお話です。

ランナウェイ・プロセスという仮説を考えると、説明できることが増えます。

ハシリヒキガエルは声の大きさで選り好みしますが、遠くにいる声の大きいオスより、近くにいる声の小さい(でも大きく聞こえる)オスを選びます。メスが大きい声のオスを探してあちこち歩き回ると、カモメやカササギなどの捕食者に食べられやすくなってしまうことから、コストが最小になるような淘汰がはたらき、選り好みがあまり進化しなかった。

ランナウェイ・プロセスに「選り好みのコスト」と「突然変異」を加えることで、ランナウェイ・モデルは数学としても成り立つようになります。ここらへんの仮説がくつがえされて新たな仮説が出てくるあたりは、読んでいてわくわくしました。科学者たちの熱いドラマをつい妄想しながら読んでしまいます。

以上が第5章までの内容です。実はつづく第6章と第7章で、さらなるどんでん返しが待ってるんですよ。これはぜひ本書で読んでください。

以下、大ざっぱに書いておきます。

第6章は「選り好みをめぐる疑問」として、自然と生物の多様性をあらためて見直していきます。選り好みの個体差または個性、オスが「出産」するタツノオトシゴ、メスどうしの「雌間競争」、メスの派手な装飾、一夫一妻の鳥のDNA分析であきらかになった「不倫」すなわち「つがい外交尾」とその理由など。

第7章は「雌雄の対立と葛藤」として、性淘汰の考えを大きく変えた、オスとメスの根源的な利害の対立と、自然の摂理や利益を超えた非効率かつ非適応的な行動を考えていきます。昆虫のいのちがけの交尾、ほかのオスの精子をシャベル状の性器で掻き出したり、毒殺してしまう精子間競争、そしてその有害物質を解毒するメスの攻防、ほかのオスと交尾したがるメスを囲いこむための配偶者防衛、雌雄の進化的軍拡競争など。

第8章でダーウィンとウォレスの論争からふり返り、本書をまとめて終わります。

いやあ、おもしろかった。

ぬるいジェンダー論を戦わせたり、男性蔑視をいやがって女性蔑視したり、女性蔑視をいやがって男性蔑視をするような人をよく見かけます。男性蔑視をするフェミニストぶったある女性に、わたしはひどいいやがらせをされたことがあります。

この本をBOOKOFF店員のようにヤスリがけして、出てきた粉を煎じて、そんな人たちに飲ませたい。そう思いました。

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カテゴリー: サイエンス, 書籍

ジプシー・キングス『ボラーレ(Volare)』を日本語化しました

ビールのCMでおなじみのジプシー・キングス『ボラーレ(Volare)』が歌いたい。でもスペイン語はわからない。

そんなお悩みをよく耳にします。そこで日本人にも歌いやすいよう、同居人といっしょに日本語化しました。CMサイズの短いバージョンですが、ぜひお役に立ててください。あなたも煮詰まった会議などで「意味秘蔵薔薇!」と歌い、明るいラテンの世界へ旅立ちましょう。

意味 秘蔵 薔薇 姉照れ 紅糸
ボラれ 往々
寛太 礼 王王王王
寝る部 べっぴんと犬
笛 立地へ 痔 廃れ 羅臼(らうす)

本家の歌詞:

Y me hizo a volar en el cielo infinito
Volare, oh oh
Cantare, oh oh oh oh
Nel blu dipinto di blu
Felice di stare lassu

どんな曲? という方はYOUTUBEなどで「Gipsy Kings – Volare」と検索してみてください。曲に合わせていっしょに歌うと楽しいですよ。べっぴんと犬!

カテゴリー: 音楽

三中信宏『系統樹思考の世界』を読む

三中信宏『系統樹思考の世界』を読みました。理系・文系の壁を超えた共通言語としての系統樹思考のあれこれを書いた本です。おもしろかった。

このところ読んでいる進化学の本をまとめるつもりで読んだんですが、それ以外の『内科医からみた動物たち』、『幽霊を捕まえようとした科学者たち』、『捏造された聖書』ともつながってしまう射程の広い内容におどろきました。これはすごいなあ。読むのにだいぶ時間がかかりましたよ。やや射程を広げすぎたせいでまとまりが悪く感じますが、こんなのはぜいたくな批判でしょうね。

グローバルな科学にはいくつかの基準があります。

1.観察可能であること
2.実験可能であること
3.反復可能であること
4.予測可能であること
5.一般化可能であること

しかし、たとえば進化学は、観察も実験も反復もできません。人類の二足歩行の理由を調べたくてもアウストラロピテクスからやり直そうってわけにはいかない。そこで、こういうローカルな科学に合った科学哲学が考えられます。「演繹」とも「帰納」ともちがう「アブダクション」です。

アブダクションはかんたんに言うと、最良の説明を発見する推論方法(チャールズ・S・パーク)。

理論の「真偽」を問うのではなく、観察データのもとでどの理論が「より良い説明」を与えてくれるのかを相互比較する――アブダクション、すなわちデータによる対立理論の相対的ランキングは、幅広い領域(歴史科学も含まれる)における理論選択の経験的基準として用いることができそうです。

アン・ギボンズ『最初のヒト』の「イースト・サイド・ストーリー」という仮説とそれをくつがえす発見、あるいは分子時計がらみの話などは、まさにアブダクションですね。『捏造された聖書』のオリジナルテキスト復元のためにいくつかの写本グループにわけてくらべて調べることもアブダクションに入るでしょう。『考古学の教室』や『「古代史」謎解きのヒント』のように与えられたわずかな遺物をもとに過去を推測しあい、それをくらべあうこともアブダクションです。

アブダクションは、思考実験であり、物語的説明であり、トークン(集合のなかの個別をあつかうもの)なので、やや説得力に欠けます。しかし天文学や進化学から明らかなように、仮説をデータで検証する体系があって、「より良い説明」を磨き上げていけるならば、アブダクションからでも普遍法則を研究することはできると語ります。

さらに、言語・写本・民族・文化・遺物など、それぞれで時間的にも空間的にも超えた共通点が比較法(系統樹)によって明らかになれば、いずれは言語の樹や写本の樹や民族の樹をひとつにまとめた「生命の樹」(the Tree of Life)をかたちづくることも夢物語ではなくなる。そう著者は語ります。いよいよ話が大きくなってきました。

けっこう盛りだくさんですが、ここまでが前半の内容です。後半からは系統樹の歴史、あれこれの作法、その利点などがトリヴィアルなネタといっしょにこってり書かれています。それは本書でお読みください。

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以下、気になったところを拾っていきます。

早田文蔵さんに関しては、著者は誤解をしているかもしれません。早田さんは森羅万象のかたちづくる網状ネットワークを踏まえた動的な自然分類を目指した。その理論のヒントを華厳経の教義から得たそうです。

ある科学理論のひらめきを与えるのは、必ずしもデータであるとは限らず、場合によっては偶然の賜物だったり、時として宗教的啓示だったりします。早田の場合も天台宗の教義が「科学する心の支え」になっていたのかもしれません。

早田さんが論文にくり返し天台宗(とくに華厳経)の教理に言及したことから、よほど心に刻み込まれた宗教的体験があったのかもしれないと著者は考えています。しかし、そもそも華厳経の教えが動的かつネットワーク的です。異質なものが集まっていて、あちこちにつながりながら、全体として調和がとれている、そういう「ホロニック・ネットワーク」が華厳のキモでしょう。

早田さんにはもしかしたら宗教的体験があったのかもしれませんが、華厳理論を知るだけでも充分にヒントを得られたはずです。天台宗の教義は「科学する心の支え」どころか、科学よりずっと先を行った理論があったわけですから。もちろん宗教的な直観とイメージで世界を捉えたものですが。

それに、華厳理論を応用した早田文蔵さんよりとんでもない巨人が日本宗教界にいます。空海は華厳理論を応用して『秘密曼荼羅十住心論』を書き上げ、日本に渡来した数多くの仏教の宗派をならべて、くらべて、つなげた系統樹思考の達人でしょう。もっと評価されてしかるべき、というか、この本に書かれてないのがふしぎなくらいだと思います。

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分類主義者や本質主義者との対立があったことがほのめかされてますが、もっと突っこんで書いてほしかった。どろどろした科学者たちの論争があったはずです。きっと、この本がことさら系統樹の大切さを説く背景には、いままで軽んじられてきた歴史があるんじゃないかと思います。

それに「種(species)はない」と「新しい形而上学」の話は、かなりぐっときたんですが、ほとんど説明されません。人はそもそも認知的に分類したがる分類主義者で、それに加えて、なんらかの本質があると思いこんでしまう本質主義者である、というのがキーなんでしょうけど、いまいちピンときません。もっと詳しく書いたものが読みたい。

系統樹をつくるときの最短距離とかアルゴリズムとか離散数学とNP完全問題のあたりは、もっとへヴィーな数学をあつかわなければいけないはずですが、ここも説明があっさりしすぎです。新書だから仕方ないかもしれませんが、これで理解&実践できる人は、よっぽどの才人じゃないかと……。

まあ、深みにはまりたいなら参考文献を読め、ってことかもしれません。

あとがきのスペシャル・サンクスで、執筆に利用した喫茶店がずらずらならべてあるのは笑いました。こんなのはじめて読みましたよ。

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カテゴリー: サイエンス, 書籍

アン・ギボンズ『最初のヒト』を読む

アン・ギボンズ『最初のヒト』を読みました。ジャワ原人からトゥーマイまでの発掘と、化石ハンターたちの姿をせきららに描いた本です。たいへんおもしろかった。

この本は、時代ごとに立てられるさまざまな仮説と、それがくつがえされる様子がていねいに描かれ、化石人類の研究史をなぞっていきます。また、化石ハンターたちが、どういう時代背景のなか、どんなことを考えながら、どこで、どんなふうに化石を見つけたのかがじっくり描かれ、化石ハンターの個人史と発掘史をなぞっていきます。

イブ・コパンの仮説に「イースト・サイド・ストーリー」があります。ざっくりまとめると:

気候の変化で東アフリカの森林が減り、それまで木登りの生活をしていた類人猿は草原で二足歩行の生活をはじめ、人類へと進化した。西アフリカの森林にとどまった類人猿はチンパンジーへと進化した。東西の気候と環境が、人類とチンパンジーの進化をわける原因だった。

実にもっともらしい仮説ですが、その後の発掘によってくつがえされていきます。

  • 中央アフリカで化石が見つかった。
  • アルディピテクス・ラミダス、オロリン・ツゲネンシス、アルディピテクス・カダバの化石は、森林で生活する動物の化石といっしょに見つかった。
  • サヘラントロプス・チャデンシスはモザイク状の土地に生きていたらしく、いろいろな動物の化石といっしょに見つかった。
  • 東アフリカで動物相をわけるほど森林が減る時期はもっと最近のことだと修正された。
  • 最新の情報では、東アフリカでチンパンジーの化石が見つかった(西に行ったわけじゃなかった)。

別の本から仕入れた情報もありますが、だいたいこんな感じで仮説「イースト・サイド・ストーリー」はボコボコにやっつけられます。ごぞんじロバート・ワイズ監督の『ウエスト・サイド物語』をもとネタにした名前は良かったんですけどね。

これとは逆に、ゴリラやチンパンジーがたくさんいるからアフリカが人類進化の舞台だったんじゃないかなーというダーウィンのゆるゆるの仮説はどんどん実証されていっちゃうんです。皮肉な運命がスリリングで楽しい。

化石ハンターのなかでは、とくにマーティン・ピクフォードの暴れっぷりがすごかった。この人はめちゃくちゃだ。

ピクフォードは、ケニアの発掘をリーキー家に独占されていることに反発して『リチャード・E・リーキー――策謀の大家』という本を書きます。

まず本は、「リチャード・リーキーの途方もない不正の犠牲者へ」という献辞の扉で始まる。本文では、リーキーは「寄生虫」、その学問は「アホ」、彼の著作は「誤りの山」、その友人は「おべっか使い」と書かれていた。

こどものケンカかよ!

アンドリュー・ヒルの指揮するイェール大学隊だけが調査の許可をもっていたため、ピクフォードは許可の取り消されるが、それを告げる手紙を「偽造文章だ!」と受け取らず、無視して調査をつづけた。

そしてピクフォードは化石オロリン・ツゲネンシスを発掘する。でも、化石のデータを公表しなかった。ティム・ホワイトが「公表しろ」と迫ると、ピクフォードは「まず、お前が十年間も隠し持ってる化石アルディピテクス・ラミダスのデータを公表しやがれ!」と反論する。

読んでいて胸やけがしそうなほど、どろどろした人間関係です。

ただ、これは化石をめぐるシステムの問題でもあったようです。化石の発掘には、富と名声がかかっていて、研究資金をたくさんもらうためにも、ほかの学者に先を越されるのはまずかった。見つけた化石のデータを公表せずに隠しているほど自分が有利になるわけです。こんな対立を生むシステムじゃ、どろどろしない方がおかしい。

第2部8章の冒頭にすばらしい引用があったので、再引用して終わります。

本当の発見の旅は、新しい景色を探し求めることにではなく、新しい目を持つことにある。
――マルセル・プルースト

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カテゴリー: サイエンス, 書籍

フランセス・アッシュクロフト『人間はどこまで耐えられるのか』を読む(2/2)

(つづき)

てっきり『人間はどこまで耐えられるのか』という題名だから、人間のことだけを書いた本だと思ってました。第5章から先はちょっと毛色が変わって、生理学の教授が持ちネタをぶちこんだ感じになってます。

第5章は走りの科学とドーピングについて。

筋肉の収縮を科学的に分析したり、ドーピングがもたらす副作用を分泌物から説明したり、運動能力を遺伝子から読み取ったり、理系テキストに不慣れなわたしはくらくらしました。

いまのオリンピックは商業主義にふり回されて、ドーピングが大変なことになってます。古代のオリンピックでは、勝者には栄光のみがあたえられ、ほとんど賞品はなかった。まさに理想的な競技会……と思いきや、敵に金を払って負けてもらう「買収」は行われていたとのこと。まあ、人間ってこんなもんですよね。

第6章は宇宙と人について。ここはかなり面白かった。人が宇宙空間に無防備で飛び出すと、あっという間に「消えて」しまうらしいです。

肺の空気がすべて噴き出て、血液や体液に溶けていたガスが気化し、細胞がばらばらになる。血管の中は気泡だらけになって、脳に酸素が運ばれなくなる。体内の器官に含まれていたガスが膨張し、消化管が破裂して鼓膜がさけて、あまりの寒さに体が凍りつく。すべては一瞬のことで、十五秒と経たないうちに意識を失うだろう。

人が地球を離れる宇宙時代になったら、こんな安楽死もありかもしれません。そういえばガンダムで宇宙空間に無防備で飛び出したキャラクターがいましたね。ふつうに乳繰りあっていたような……。

液体がすぐに気化する宇宙空間ならではの名言:

宇宙で最も美しい光景は何かと質問されて、アポロのある乗組員は、「船から捨てた尿の雲が、太陽に輝いていたこと」と答えた。

星雲に、キラキラ光る、しっこ雲。つい一句詠んでしまうほど感動しました。宇宙時代になったら、こういう恋人へのプレゼントもありかもしれません。ふと出崎統監督の「輝くゲロ」を思い出しました。

宇宙船のなかでは人体にいろいろな影響があるそうです。代表的なところでは、1.身長が伸びる、2.骨や筋肉が委縮する、3.赤血球が減る、4.感染症にかかりやすくなる。1~3までは重力のある地上に慣れた人体のことを考えれば想像できますが4の感染症はふしぎです。

その原因のひとつは、人の皮膚から汗で流れでる細菌。無重力の船内にぷかぷか浮かんでいる細菌をふくんだ汚い空気を吸うと感染症かかってしまう。アポロ計画のときにようやく原因に気づき、念入りに殺菌することで感染症を減らしたものの、まだ完璧とは言えない。

つい最近、ハウス食品が開発した宇宙食のカレーは、そこらへんの宇宙病を考えた栄養バランスとのことです。通販できるみたいなので食べてみようと思います。

第7章は極地で生きる微生物について。

だいたいの生きものは暑さ寒さに弱いうえに、酸素がないと生きられません。ところが微生物のなかには暑さ寒さが好きだったり、強い酸のなかでも、死海などの強い塩のなかでも、宇宙空間でも平気で生きているやつがいる。おどろくべきことに酸素を嫌う、嫌気性微生物だっている。

嫌気性微生物にとっては、酸素がほとんどない生まれたばかりの地球はパラダイスだったことでしょう。ところが進化したシアノバクテリアが光合成をはじめ、地球が現在と同じくらいの酸素濃度になってしまい、嫌気性微生物はあえなく絶滅する。

ああ、これを「環境破壊」と呼ばずしてなんと呼ぼう! 目に見える動植物ばっかり心配する映画『アース』のスタッフに猛省をうながしたい。(なかば冗談ですよ、念のため)

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カテゴリー: サイエンス, 書籍

フランセス・アッシュクロフト『人間はどこまで耐えられるのか』を読む(1/2)

フランセス・アッシュクロフト『人間はどこまで耐えられるのか』を読みました。オックスフォード大学の教授が生きものの限界について書いた本です。アデノシンの構造式が登場するなど、ごりごりの理系テキストにへこたれそうになりましたが、とてもおもしろかった。

もくじ
第1章 どのくらい高く登れるのか
第2章 どのくらい深く潜れるのか
第3章 どのくらいの暑さに耐えられるのか
第4章 どのくらいの寒さに耐えられるのか
第5章 どのくらい速く走れるのか
第6章 宇宙では生きていけるのか
第7章 生命はどこまで耐えられるのか

人間が耐えられる「限界の数値」を見てもとくに感動はしないんですよ。高度八千メートル、水深七二メートル(フリーダイビング)、高温五十度、低温マイナス二十度前後。ふーんってくらいです。

わたしはむしろ高さの限界を知らずに気球で空を目指したチャレンジャーや、深さの限界を知らずに川に潜って橋柱をつくっていた労働者たちの姿にぐっときますね。限界を前にした人びとの営みに興味がある。

高山病を知らない時代は、山は神々の聖地だと信じられていて、誰もが近づかなかった。潜水病を知らない時代は「あれ、なんか体調が変だぞ」くらいで無茶な潜水服を着てはたらいていた。日射病を知らない時代は、太陽の化学線が脊髄に影響をおよぼして脳にダメージをあたえると信じられていて、帽子に鉄板やアスファルトをしこんでヘルメットよろしく被っていた。

人間が耐えられる限界を科学者は自分や家族を実験台にして調べていたそうです。J・B・S・ホールデーンは四歳のころから父ジョン・スコット・ホールデーンの実験台として活躍して、みずからも科学者になり、また実験台になって何度も死にかけた。父は高さの限界と高山病を調べ、子は深さの限界と潜水病を調べた。なんという親子でしょうか。

パイプをくわえてほほ笑むJ・B・S・ホールデーンは『ゴッド・ファーザー』に登場していても違和感のないマフィア顔なのに、かずかずの実験台や調査だけではなく、遺伝形質の変化を数学的に実証したりもしてます。いまスキューバダイビングを楽しめるのは、このマフィア顔のおかげらしいですよ。

冬将軍にやられ、モスクワから撤退したナポレオン軍は、馬を解体して食べていたそうです。馬を殺すと凍ってしまうので、生きたまま脚を切り落して食べる。

立って歩いている馬の脚から肉を切り取ったが、悲惨な馬は少しも痛い素振りなど見せなかった。あまりの寒さで感覚が麻痺していたのだ。(略)血は瞬間に凍りつき、流れ落ちない。両方の太ももから大きく肉をえぐり取られたまま、数日間歩いている哀れな馬もいた。

凄惨な現場ですが、寒さが麻酔と止血に効果的だとわかり、いまでは手術や出産でふつうに行われています。ありがとう、かわいそうな馬よ。

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カテゴリー: サイエンス, 書籍

troubleclefとロバート・ワイズは怖ろしい

世界的に(?)有名なtroubleclefさんによる「My Favorite Things」を紹介します。

http://jp.youtube.com/watch?v=vLOPlMlSnXo

この曲は映画『サウンド・オブ・ミュージック』に使われていたもので、聴いていると京都に行きたくなる呪いがかけられています。ちょっと映像は悪いですが、アレンジといい解釈といい絶品。

***

同居人がオーストラリアに留学していたころ、ホスト・ファミリーの母が、テレビで放送する『サウンド・オブ・ミュージック』を楽しみにしていたそうです。いっぽう若い子供たちは、あんなの一回見れば充分、それより『スター・ウォーズ』が見たい、と語っていたとのこと。きっとロバート・ワイズ監督の怖ろしさを知らないんでしょう。

***

ロバート・ワイズ監督の映画『たたり』は、まだCGがなかったころに、あの手この手の技術を使って恐怖を演出しています。Discovery Channelの番組で見たんですが、最後に霊がドアを押す場面は、ドアを薄いたわむ板でつくって、セットのうしろから合図とともに角材で押したんだそうです。ロバート・ワイズ監督は「はは、単純だろ?」と語る。うーん、怖ろしい。

「正体のわからないものがいちばん怖い――それが私の信条なんだ」
「目に見える相手なら何とかなる。でも見えないものや聞こえないものに対して、人は無力だ」

同じ番組内でのワイズ語録です。

黒沢清監督は著書『映画はおそろしい』のなかで、もし『たたり』に1カットでも幽霊が登場すれば『回転』を抜いたかもしれない、と書いています。その点が「実に惜しい」と。しかし、ロバート・ワイズ監督は、上に引用した信条にしたがって幽霊を登場させなかったんでしょう。

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カテゴリー: 映像・TV・DVD, 映画, 雑記

近況とブログのまとめづくり

じわじわ忙しくなってきました。いまは、くるぶしまで浸かっている状態ですが、これが腰まで来るとからだごともっていかれるので、その前になんとか手を打たねばなりません。

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このブログは、はじめたのは去年からですが、すでに730件を超える記事があるみたいです。ここらへんで「人気エントリー」とか「まとめエントリー」をつくった方がいいかもしれません。もう自分でも読み直すのが面倒。

カテゴリー: 雑記