こんなゲームはどうよ

 まず、ノートパソコンを買う。んで、そのノートパソコンを具体的にどう使おうか買ってから考える。そういうゲーム。どうよ、どうよ、かなりクレイジーな臭いがプンプンしないか? ノートパソコンっても買うにはけっこう金が要るし、買ったなら代金の分はしっかり活用しなくちゃもったいない。だから、普段は使わないような頭を一生懸命に使って「どう使うか」を考えるんだ。おお、すごいゲームだ。すごいばかだ。頭脳ゲームである、なんて簡単には言えるけど、普通の落ちゲーよりはるかに(違う意味で)落ちていきそうな落ちゲーである、とも言える。言いたい。言えないか。まあいいや。

 たぶん、勢いだけでノートパソコンを買っても、あんまり損はしないと思う。たとえ損をしたとしても、大した損にはならないだろうとも思うんだ。だってそうだろう、ゲームとしては完敗して、ぜんぜんノートパソコンが活用できなくても、ノートパソコンを欲しがってる誰かに売っ払っちゃえば、プラマイでゼロにはならないけど、めちゃめちゃ損をするってわけでもない。そうだね、先にノートパソコンを欲しがってるヤツと友達になっておくってのも、ゲームをうまくやるためのコツかもしれない。もちろん、これ以外にも損をしないですむ方法はいくらでも考えることができるし、ゲーム中に失敗したときの後始末を考えておくっていう、戦略めいた要素だ、と考えることもできる。要はアレだ、ノートパソコンを買った値と売った値の差額がどれだけ小さくできるか、もしくは、どんだけその差額の分で楽しめたか、だね。まあ、誰かに売っ払ったりしないで、自分の活用法を見つけられれば、それに越したことはないんだけど。

 このゲームのポイントは、なんといっても、買うのがノートパソコンだというところにある。高価なものだったらなんでも代用が利きそうなゲームだけど、それがノートパソコンだから、普段インターネットをするようなヤツ(あんたのことだ)には、いくつか活用する方法が考えられてしまう。んでも、活用する方法が考えられはするけど、特にノートパソコンが必要じゃない場合が多いんだ(本当に必要ならゲームにならない)。そのギリギリの選択肢を必死で捜さなきゃならないのは、やっぱりノートパソコンだからこそで、そういう意味では、同じ高価なものでもアクセサリーや家電品とはちがう。そういうところが、このゲームのポイントなんだ。

 どうよ。こんなゲームはどうよ。見えない崖っぷちに向かってチキンレースするような、こんなゲームはどうよ。毎日がクダラネーとかツマラネーとか単調だーとか言ってるボーイズンガールズは、ぜひ試してみるべきだ、と思う。進んでやるべきだ、とも思う。ノートパソコンを心から求めて買うべきだ、とも思ったりするんだ。え、なに? 私? 私はこのゲームをやらないのかって? いえいえ、私は遠慮しますよ。そんなゲームより、実生活の方がよっぽどゲームみたいなんでね。

カテゴリー: ゲーム, 雑記

同窓会のお知らせ

 あいての声は女性で、その人は「高校のころ同じクラスだった○○○だけど」と、ぼくがその人のことを覚えているかどうか訊いてくるのだった。
 当然、と言っては失礼かもしれないけど、覚えているはずもなかった。この文章を書いている時点で、もうすでに忘れてしまっているくらい、まったく興味のない名前だったからだ。
 ○○○さんからのその電話は、同窓会についてのことだった。
 ここであやまっても仕方がないけど、ごめんね、○○○さん。実は、ぼくはきみの声を聴いた瞬間から電話を切るまでの間、ずっといやらしいことを想像していたんだよ。

 ぼくは自分が高校生だったころのことを、正直に言うと、思い出したくない。
 何ひとつ思い出がないから、何ひとつ思い出すことができない。過去に肩をたたかれて、振り返ったとたん、ほほに指でつっかえ棒をされるという幻覚を見る。実際は、肩をたたく過去も、つっかえ棒になる指も、何も、ない。
 だから思い出したくない。ぼくは、思い出すために探る腕が、むなしく虚空をきることを、よく判っている。まるでからっぽの貯金箱のようだ、なんてチンケな比喩をしたくなるほどに、ぼくは自分の高校生のころを憎んでいる。

 その電話の最中に、受話器から聞こえてくる○○○さんの声と、ぼくの過去への嫌悪感がつむいだ淫らな情景は、簡単に言えばレイプのシーンだった。
 いやがる女性の躰に、むりやり罪悪感と不浄感とを、ボルト状のくぎのようにねじ込んでいく。そんなレイプのシーンだった。

 しかし、ぼくが本当に興奮したのは、レイプを受けた後の、その女性の生活のことを考えていたときだった。
 彼女に残された生活は、性行為そのものを完璧に毛嫌いするか、逆にその嫌な体験を消し去るために、自分から男性遍歴をくり返したりするかの、どちらかしかない。
 飼いねこが死んださみしさを、また新しいねこを飼うことで穴埋めするような、そんな女性の生活を考えていたとき、ぼくは本当に興奮したのだった。

 心の傷は、印象を書き換えることでいやされる傾向がある。だから、最初の嫌な経験を、心ならずも求めてしまう。たとえそれが身を切るようなプレイバックであったとしても、追体験をすることでしか印象を書き換えることはできないから、いやがる自分の躰に、自らの手でいやしのくぎをねじ込むのだ。
 これ以上におぞましい、そして美しいレイプが、他にあるだろうか。

 ぼくがちょっと冗談を言って笑わしたあと、「参加か不参加を教えてほしい」と○○○さんが言ったときには、すでにこの問に対するぼくの返事は決まっていた。

 「もちろん参加するよ。時間と場所を教えて」

 オーケイ。そうさ、ぼくは自分の躰に、くぎをねじ込もうとしているんだ。

カテゴリー: 雑記

ウソをつく理由

僕がウソをつくのは3つの理由からです。

ひとつめ、喜びを大きくするために。
ふたつめ、悲しみを小さくするために。
みっつめ、みっつめ、みっつめ。

「みっつめはありません」
このウソは、みっつめの理由でつきました。

カテゴリー: 雑記

短歌アウト

 あなたの恋の処方箋。平川式・恋愛短歌の時間がやってまいりました。残念ながらこれが今週最後の更新ですが、皆さんはりきってまいりましょう。それではご一緒に、「た~ん歌アウツ!」(←かけ声)

@

プルルルル
口から耳の
50km
音で結べば
それがうれしい

@

やさしさは
文字でもずっと
同じだね
彼が言います
「ネットに戻ろう」

@

「好き」のあと
言わぬあなたの
まごころに
現在形の
恋ぞ悲しき

@

 いかがでしたでしょうか。恋の行く末は、人生に咲いた一輪の曼珠沙華。時間となりました。平川式・恋愛短歌、また来週のお目見えとなります。それでは最後、ご一緒にどうぞ。「た~ん歌アウツ!」(←かけ声)

カテゴリー: , 雑記

「○」の部分に「詩」「短歌」「ウエブ日記」などを当てはめてみましょう

○を書くのはむずかしい。
書いてみれば、それはよくわかる。

○を作る行程は、無駄な言葉をけずる作業だと言える。
しかし、言葉のダイエットは、身体のダイエットと同じくらいハードだ。
やりすぎは健康を損なう恐れもある。

致命的なことに、○の言葉たちは扱うのに気苦労が絶えない。
彼らは、すぐにヘソをまげて、どこか遠くへ去ってしまうからだ。
運よく彼らを呼び戻せたとしても、前と様子が違っているのがほとんどだ。
こうなったらもう、投げだす以外の方法はない。

ビールと○の共通点は次の2つ。
1.人を酔わせる
2.優れた作り手は独自の味を出す

最終的な目的地が表現なら、小説も○も同じ方向に向かっている。
そしてフル・マラソンを小説に例えるなら、○は「言葉の近道」だろう。
その近道は、ジグザグしているぶん、ちょっと面白い。

もう一度言う。これで最後だ。
○を書くのはむずかしい。
書いてみれば、それはよくわかる。

カテゴリー: , 雑記

こんにちは! 来てくれてありがとう!

ここは僕、平川哲生が前に作っていたホームページ「劇団.[宇宙的]」をぶっ壊して作り直した「ジェッツ00501」です。「ジェッツ00501」は「じぇっつまるまるごひゃくいち」と読みます。センスなんてありません。
はじめての人たち、はじめまして! そうでない人たち、お久しぶり!

このページは、その日幻視した虚像や目覚める前の短い悪夢などを取り上げて真剣に論考し、最終的に「どうでもいい」という結論に達するまでの過程をバラバラと細分化して僕が飽きるまで報告を続けようといった趣旨のページです。いきなり心配です。

というわけで、そんな心配を吹き飛ばしてくれる応援メールを募集します! メールをくれた方は明日の日記にてコメント付きで感謝を表したいと思います。どしどし送って下さい!

もしも誰も送ってこなかった場合は自分で2つくらい考えます。それにコメント付きで感謝を表します。自分で応援して自分で感謝します。1人で2人羽織を装います。1人で2人3脚を試みます。がんばれ、がんばれ、メールを期待した方がバカなんだ、がんばれ、がんばれ、もう少し身の程をわきまえろよ、がんばれ、がんば……。

中止します。ダメダメ。応援メールなんて企画自体がボツです。もう最悪。さみしさが浮き彫りにされます。やめて下さい。何のためにホームページを作ったのか判らなくなります。こわい。やめて。僕が消えてしまう。こわい。ああ。手が。ああ。手が震えてきた。ああ。ああ。

――以上が幻視した虚像と悪夢の実例です。
――応援メールの企画はありません。

カテゴリー: 雑記

初めてコケティッシュと聞いたとき瞬間的に思い浮かんだこと

逃げ出したニワトリを懸命に追いかける少年。おじいさまにプレゼントしようと、時を忘れ野花でかんむりを作る少女。チロチロ燃える暖炉の前で揺り椅子に腰掛け、大きな手のひらで膝上の猫をなでるおじいさま。猫は気持ちよさそうに寝息を立てている。「今日は峠でとれた山菜をスープにしてみましたのよ」おばあさまはキッチンからおもむろに声をかける。「そりゃあ楽しみだ。あまったらとなりにも分けてあげなさい。もちろん味を確かめてからな」おじいさまの小粋なトークで宝物のような笑顔が生まれる。畑仕事から亭主が戻ってきた。キッチンでおばあさまの手伝いをしていた嫁が顔をほころばせて出迎えの許可をもらう。

両手で抱きしめると胸部を火傷してしまいそうな、そんなあったか家族。

これが僕の初コケティッシュでした。

カテゴリー: 雑記

ソのシャープ

――この前の、そう、お稽古の時にね、子供たちにドレミの歌を教えてたのよ。それで……ちょっと、聞いてる? いやだわ、もう。それでね…

 通路は不規則な黒白模様で、ピアノの鍵盤の上を歩いているようだった。
 滝沢杏子はわざとらしく足音を立てて歩いたが、当然コツコツと靴底の音がしただけだった。この廊下は少しできすぎている、と杏子は思った。
 鍵盤はだらだらとロビーにも続き、正装した人々に乱雑な演奏をされていた。杏子が人波を泳ぐように進んでいると、おほほ、という笑い声が聞こえ、それがまさに、おほほ以外の何ものでもない笑い声で、とても可笑しかった。
 今日は杏子の友人、片瀬頼子のピアノ・リサイタルが行われる。――その時ふわーっと頭によぎったの。ああ、人生ってドレミの歌みたいだわ、って。
あはは、これなら杏ちゃんだって知ってる歌でしょ?

 正直に言うと冷やかしに来たのだ。電話で、アンタなんか絶対に寝ちゃうわ、と言われていたせいもある。しかしその気も失せてしまった。
 まず会場が大きい。頼子の控え室を捜すつもりが、またロビーに戻ってしまった。そして客層に品がある。つまり、みんなお金持ちっぽいのだ。もともとピアノ・リサイタルはそういうものなのかもしれないが、滅多に出向かないので(実は今日が初めてだが)それもよく判らない。
 改めて、頼子は”おほほの世界”にいると実感した。冷やかしどころではない。――人はね、生きながら歌って、歌いながら新しい音階を覚えていくの。ドの次はレ、レの次はミって。ドレミファソラシド、ドレミファソラシドってね。

 人に訪ねるのが頼子の控え室までの一番の近道だろう。実は廊下のぐるりを一周する前からそれは判っていたことだ。それでも誰にも訪ねなかったのは、単に、誰に訪ねるかを決めかねたせいだ。人がたくさんいて、そのほとんどが正装している。誰がスタッフで誰がそうでないのか、その区別は当のスタッフも目印なしにはできないだろう。そして、きっと五分おきに目印を見ては、自分が本当にスタッフかどうかを確認する者もいるに違いない。 そうか、目印を捜せばいいのか。――ひとつずつ経験していって、ひとつずつ覚えていって、いつか自分だけのオリジナルソングを歌うために、人は生きているのよ。それが、ドレミの歌みたいだなって思ったの。

 頼子は真剣な顔でピアノを弾いている。当たり前だ。
 目印のスタッフは私を、控え室ではなく、コンサート・ホールに案内してくれた。もう始まりますよ、と言うのだ。電話での、アンタなんか絶対に寝ちゃうわ、というセリフが私の精神に影響し、無意識に睡眠を多くとった(つまり寝坊した)せいであまり時間がなかったのだ。それと、廊下を一周したこともかな。
 私たちは今でもよく遊ぶし電話もよくする。しかし、ピアノを弾く頼子の姿は中学生の時以来見てなかった。
 頼子の顔は真剣だ。なにより、ニキビがない。――何よお。別にいいじゃない、私がマジメになったって。たまにはアンタもマジメになさいよ。……そうね、私のドレミで言うならアンタはソかな、ううん、私の、ソのシャープね。

 たくさんの拍手にまぎれて私も拍手をしましたよ。アナタはいつになくお堅い顔をしていたので、バッチリ写真に撮っておきました。すごいですよ、顔。汗とかで。うふふ。しばらく私こと杏子は、ひめ屋のケーキを美味しくいただけそうです。 アナタのソのシャープは、写真を強迫に使うつもりですよ。お気をつけあそばせ。(おわり)

カテゴリー: 短編小説, 自作のもの

図書室の話

 ボクは、何となく目に付いたエリオットの詩集に手を伸ばす。

 「あっ」

 もう一つの手がボクの手に重なり、ボクとその手の主は、ほぼ同時に声を上げる。
 そして、ボクは、恋に落ちてしまった。

 彼女は言う「先、どうぞ」
 ボクは言う「僕は後でいいですよ」

 気まずい時間が流れる。ボクはこういうのが苦手なんだ。すると、彼女は言った。

 「あの……私が先でいいですか? 三日で読みます。四日後にどこかで会いましょう」

 彼女にリードしてもらう形で、別に異論もなくボクは素直に従った。
 四日後はただ本を受け取っただけで、愚かにも期待しすぎたボクは、その後せっかく借りたエリオットの詩集を読む気にもなれなかった。妄想ではち切れそうだった頭に風穴を開けられ、惨めにひゅるひゅると空を舞っている感じだ。しばらく何も手につかなかった。
 女性上位時代なんて幻想だ。だって、性別がある限り女性が常に上なのだから。そして常に男は、もう読まれぬ本の”しおり”のような役所である。役に立っていても、すでに役立たずなのだ。

 それから数日が経ち、エリオットはボクの中で悪人に近いポジションになっていた。八つ当たりだということは自分で分かっていたのだが、それでもやり場のない怒りをためるのが嫌だったのでエリオットにはしばらく臭い牢を我慢してもらうことにした。
 あそこの図書室はたっぷり二週間も借りることが出来るから、この本の返却日まではまだ一週間以上ある。真面目に読んだら、たぶん十回以上は読み込めるだろう。
 それでも悪人の詩集は、読まれるどころか開かれる気配すらなかった。もし、こっそり中身がベルセルクに入れ替えられていてもボクは気づかなかっただろう。実は本は外部だけで、内部のくり貫いた部分にエリオットの脱獄セットがピタリと収まっていたとしても、やはり気づかなかっただろう。時折そんな馬鹿げたことを想像してクスクス笑ったりしていた。

 返却日は刻々と迫り、それとシンクロしてエリオットも大泥棒に格上げ(?)された。
 そしてだらだらと時間は過ぎ、彼の無実の罪は晴らされることなく、同時に読まれることもなく、本を返す日になったのだった。
 よくよく考えると、別に何があったということでもないのだが(むしろ無かったことに思うところがあるのだが)ボクは怪盗エリオットの詩集を図書室の本棚へ隠すように、出来るだけ目につかない場所に返していた。隠した場所は早く忘れよう、そう思った。

 それ以来図書室で彼女を見かける度に、なんとなく意識してしまって、目を伏せて歩いたりした。こっちが意識すると向こうもこっちを見てるような気がして、それがまたボクを嫌な気にさせるのだった。
 こんなときに「こんにちは。よく会いますね」とか言えたら俺の人生も少しは明るくなるんだろうなぁ、なんて真剣に思って、馬鹿らしくなってやめた。どうせ出来ないんだ。キャラが違うんだ。
 だいたい彼女がいるやつはどうやって見つけてくるんだよ。声をかけるのか。声をかけられるのか。意志疎通なしにいきなり彼女と呼べるわけがないから、やっぱり声をかけたり、かけられたりするんだろう。でもどこからが彼女で、どこからが彼女でないのか、そういう境界線めいたものはあるのだろうか。経験しなければ分からないことなんだろうか。それでもたぶん、つき合う二人の間柄なんて第三者が勝手に判断するものなんだろうな。そうしないと……。

 一端考え始めると、ボクは巡回迷路の犠牲者のようなもので、適当に疲れるまで延々と歩き続ける羽目になる。癖と言ってもいいかもしれない。
 恐らく、背後から斧を持ったジャック・ニコルソンに追われるような、かなり特殊な事態にでも発展しない限り答えなんて見つからないのだが、そんな特殊な事態などはその答えが見つかる確率よりも遙かに期待薄だった。そういうものである。そういうものだから仕方がないのだ。ジャック・ニコルソンだってそんなに暇じゃないんだろう。

 「読みましたか?」

 ビックリして前を向くと彼女が立っていた。急で声が出なかった。

 「え、ああ。その、うん、読んだけど」
 「それで……あの、どう……でした?」

 意外な質問だった。あの本の感想を訊かれたのだろう。もちろん読んでないから、答えられるハズもない。冷や汗が出る。しどろもどろになる。考えがまとまらない。言葉が間抜けなボクを後目にテクテク逃げていく。
 遠くの方で魔王エリオットの笑い声が聞こえた。

 「いや、別に何も……」

 そう言ってしまってから、ハッと気づいた。俺は馬鹿だ。わざわざ感想を訊いてくるということは、それなりの理由があったからに違いない。それなのに「別に何も」とは……、あんまりにも程がある。馬鹿俺、馬鹿俺、馬鹿俺俺。
 そして、こんな風にして恋愛の芽を刈り取ってたんだな、と初めて理解した。ジャック・ニコルソンに感謝である。
 ボクがそう言った後、彼女はしばらく下を向いたままで表情がよく分からなかった。のぞき込むのも変だったからやめた。少し時間があいて、そして、彼女はすごい勢いで外に飛び出し、ボクの視界から消えてしまった。ちいさく「サヨナラ」と言っていたようにも聞こえたが、良くは聞き取れなかった。
 にわかにボクの世界は慌ただしくなり始める。範疇を超えた出来事だからだ。
 どうして駆け出すんだ? 嫌がられたのか? まさかなぁ…。嫌がるくらいなら最初から声なんてかけないだろうし。じゃあどうして? 女心ってやつか? 女心と秋の空ってやつか? ハハ、俺、詩人になれるよ! 詩集でも出すか! でもこれ全然詩じゃねえな! ああ! もうワカンネエヨ! なんだ。俺がなんか悪いことでもしたんか。そうだったら言ってくれればいいのに……。

 後悔は先に立たない。そして、役にも立たないことを知った。
 ジャック・ニコルソンが微笑みかけてくれているじゃないか。落ち着こう俺。

 とりあえず、ここでいくら考えても無意味だし、だからといって追いかけても無駄だろう。今から彼女を追いかけて言い訳をするぐらいなら、きちんと詩集を読んで、それから改めて出直した方が良いような気もする。こんなことになるなら、あのときちゃんと読んでおけばよかった…。中身がベルセルクだったらツッコミの一つでも入れられたはずである。
 すると大魔王エリオットは益々調子に乗りだしたようで、ケラケラと高笑いを始めた。心が引っ掻かれたように痛んだ。その高笑いは忘れようとしたあの場所から聞こえてきた。
 僕は思う。心が揺れるのは当たり前、動揺なんて日常茶飯事。だから、恐れずに、それらすべてをまず認識してしまおう。そして、いざその状態になったとき、自分の姿を一気に客観まで押し上げてしまうのだ。そうすれば何も怖くない。動揺しているボクを見つめる違う僕の存在を感じればいい。心のブラックボックスの前にもう一層の意識をつくり出す。辛くなったらそこに逃げ込めばいい。僕に近づけるものは何もなくなる。……気分が良くて、何が悪い?
 空気の流れを感じた。そう、まず僕がすることは、高笑いを続ける彼の口を塞ぎ、仲直りし、少なくとも大魔王を人間の姿に戻し、そして彼の紡いだ詩を読むことだった。

 本を返した場所に着く。忘れられやしないんだ。そして気がつくと、弾かれたように僕は走り出していた。彼女を追いかけるために。そして謝るために。
 理由は、詩集のあるページに挟まっていた小さな紙のしおりである。

 それには丁寧な字で、こう書いてあった。

 「私はこの詩がいちばん好きです。あなたのお気に入りはありますか? よかったら今度教えてください」

 彼女に追いついたら、なんて言おう。すごく言いにくいことだけど正直に言おう。しおりのことを知らなかったんだ、ってそう言おう。しっかり自分の言葉で伝えよう。いや、その前に名前を尋ねようか。ああ、もっと速く。速く走れないものか。スニーカーを履いてくれば良かった。彼女ここまで電車で来てるのかな。もしそうだとしたら向かう方向は駅だけど、もし自転車だったら、駐輪……

ビーッ! ビーッ!

 走って通過した図書室の出口で、ひどく耳障りな音がした。僕は持っていたエリオットの詩集を危うく落としそうになった。受付の女性が言う。

「あなた、その本、貸し出し希望ですか?」

(おわり)

カテゴリー: 短編小説, 自作のもの

パソコン

パソ…混乱してるよ俺……。
パソ…コンドーム着けとけばなぁ……。
パソ…こんな年で子供なんか養っていけねぇっつーの。
パソ…婚姻届って市役所か? こっちから取りに行くのか?
パソ…今度先輩に訪ねてみるか。うん。
パソ…今度っていつだよ。やっぱ今すぐ行かなきゃだな。大切なことだし。
パソ…近藤先輩んちって何処だっけ? あれ??
パソ…根本的に間違ってるんだな、俺。まず場所を確かめてからだよな。普通はな。
パソ…こんなんだから子供できちまうんだな。うん。ダメだな。オヤジとして。
パソ…金輪際、軽率なマネはません。神に誓います。ブッダにも誓います。ザーメン。ギャハハ。
パソ…金色の野に降り立つべし、ってアニメもやめような。ダメだよな。
パソ…コンサバティブだな…なんか。自分の人生じゃないって感じ。
パソ…コンサバティブってどういう意味だっけ? ああもう軽率にやってるよ!
パソ…こんな意味だっけ? ページ間違ってない?? 保守的??

パソ…コン。愛があるのです。彼にもあなたにも。

パソ…こんなサイトだったけ? ここって。
パソ…混同しなさるな。昔は昔、今は今。
パソ…根性が腐ってるだけじゃん。
パ…………ソれを言うなぁぁあぁあぁ!

以上、パソコンでした。

カテゴリー: 雑記