旧約聖書『ヨブ記』日本語訳


01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42

01:01 ウツの地にヨブという男がいた。彼は過ちなく、正直で、を恐れ、悪を遠ざけていた。 01:02 七人の息子と三人の娘をさずかり、 01:03 羊七千頭、ラクダ三千頭、牛五百つがい、雌ロバ五百頭の財産を持ち、召使いはとても多かった。彼は東の子のなかでもっとも偉大な人物だった。 01:04 彼の息子たちはそれぞれの誕生日に自分の家で宴をもうけ、三人の姉妹を呼んでいっしょに食べたり飲んだりした。 01:05 その宴の日が一巡するごとに、ヨブは息子たちを呼びよせて聖別した。つまり、早起きして、彼らと同じ数だけ全焼のいけにえをささげた。息子たちが罪を犯し、心のなかで神を呪ったかもしれない、と思ったからである。ヨブはいつもこのようにした。

01:06 ある日、神の子たちがやって来て、ヤハウェの前に立った。そのなかにはサタンもいた。 01:07 ヤハウェはサタンに言った。「おまえはどこから来た」。

サタンは答えて言った。「地上のあちらこちらへ行き、ほうぼうを歩きまわっていました」。

01:08 ヤハウェはサタンに言った。「わたしのしもべヨブに気づいたか。彼ほどの者は地上にはいない。過ちなく、正直で、神を恐れ、悪を遠ざけている」。

01:09 サタンは答えて言った。「ヨブは理由なしに神を恐れるでしょうか。 01:10 あなたは彼とその家族、持ちもののまわりにくまなく垣をめぐらせ、守っているではありませんか。あなたが彼の仕事ぶりを祝福するので、財産はますます増えていきます。 01:11 ためしに彼の持ちものに手をのばしてごらんなさい。ヨブは面と向かってあなたを呪うでしょう」。

01:12 ヤハウェはサタンに言った。「では、彼の持ちものすべてをおまえの手にまかせよう。ただし彼自身には手を出すな」。

サタンはヤハウェのもとから立ち去った。 01:13 ヨブの息子、娘たちが、長兄の家で食事をし、酒を飲んでいた日のことである。 01:14 ひとりの使者が駆けつけて言った。「牛が畑を耕し、近くでロバが草を食べていると、 01:15 シェバ人が襲いかかってきて、家畜を奪っていきました。また召使いたちを剣の刃にかけて殺しました。わたしひとり逃げのびたので、報告に参りました」。

01:16 この使者が話し終わらないうちに、もうひとりの使者が駆けつけて言った。「天から神の火が降り、羊と召使いたちを焼き滅ぼしました。わたしひとり逃げのびたので、報告に参りました」。

01:17 この使者が話し終わらないうちに、もうひとりの使者が駆けつけて言った。「カルデア人が三隊に分かれて襲いかかってきて、ラクダを奪い、召使いたちを剣の刃にかけて殺しました。わたしひとり逃げのびたので、報告に参りました」。

01:18 この使者が話し終わらないうちに、もうひとりの使者が駆けつけて言った。「あなたの息子、娘たちが長男の家で食事をし、酒を飲んでいたところ、 01:19 とつぜん大風が荒野から吹き、四方から打ちつけられた家が若い方々の上に倒れたため、みな亡くなりました。わたしひとり逃げのびたので、報告に参りました」。

01:20 ヨブは立ち上がり、着物を裂き、髪をそった。そして地面にひれ伏して拝み、 01:21 言った。「裸でわたしは母の胎を出た、裸でわたしはかの地に帰ろう。ヤハウェは与え、ヤハウェは奪う。ヤハウェの名はたたえられよ」。 01:22 このようになっても、ヨブは罪を犯さず、また理由のない災いを神に問いたださなかった。

02:01 またある日、神の子たちがやって来て、ヤハウェの前に立った。そのなかには、ヤハウェの前に立つために、サタンもいた。 02:02 ヤハウェはサタンに言った。「おまえはどこから来た」。

サタンは答えて言った。「地上のあちらこちらへ行き、ほうぼうを歩きまわっていました」。

02:03 ヤハウェはサタンに言った。「わたしのしもべヨブに気づいたか。彼ほどの者は地上にはいない。過ちなく、正直で、神を恐れ、悪を遠ざけている。おまえはわたしをそそのかし、理由もなく彼を痛めつけたが、それでも彼は誠実なままでいる」。

02:04 サタンは答えて言った。「皮には皮を、と言います。人はみな、命のためなら持ちものすべてをさし出すものです。 02:05 ためしに彼の骨と肉に手をのばしてごらんなさい。ヨブは面と向かってあなたを呪うでしょう」。

02:06 ヤハウェはサタンに言った。「では、彼の体をおまえの手にまかせよう。ただし命は助けてやれ」。

02:07 サタンはヤハウェのもとから立ち去り、ヨブの足の裏から頭のてっぺんまでをひどい腫れものにかからせた。 02:08 ヨブは灰の上に座り、陶器のかけらを持って体をかきむしった。 02:09 彼の妻は言った。「あなたはまだ誠実なままでいるつもりですか。神を呪い、そして死になさい」。

02:10 ヨブは妻に言った。「おまえの話は、愚かな女が言いそうなことだ。わたしたちは神から幸いを受けとるのだから、災いも受けとるべきではないか」。

このようになっても、彼はその唇で罪を犯さなかった。 02:11 三人の友人が、彼に降りかかった災いのいきさつを聞き、各地から訪ねてきた。テマン人のエリパズ、シュア人のビルダデ、ナーマ人のゾパルである。ヨブを見舞い、なぐさめるために、ともにやってきた。 02:12 ところが、ヨブが遠くから見分けられないほどの姿だったので、彼らは声を上げて嘆いた。そして、それぞれ着物を裂き、ちりを頭の上でまいた。 02:13 彼らは七日七夜、ヨブと座っていたが、ひと言も話しかける者はいなかった。ヨブの苦しみがあまりにも深かったからである。

03:01 その後、ヨブは口を開き、自分の生まれた日を呪った。 03:02 ヨブは言った。

03:03 その日は滅び失せよ。わたしの生まれた日、
男の子が宿ったと告げた夜は。
03:04 その日は暗闇につつまれよ。
天の神は思い返すこともなく、
光もこれを照らすな。
03:05 その日を闇と死の影が奪い返せ。
黒雲は空を覆い隠し、
昼の漆黒はその日を恐怖におとしいれよ。
03:06 その日は年の日に加わるな、
月の数にも入るな。
その夜は、深い暗闇が取り押さえよ。
03:07 見よ、その夜は不妊のものとなれ、
どの地にも喜びの声は上がるな。
03:08 その日を呪え、日に呪いをかける者、
レビヤタンを起こす力のある者が。
03:09 たそがれの星は暗くなれ。
光を待ち望んでも叶わず、
あけぼののきらめきは人目から遠ざかれ。
03:10 わたしの母の胎の戸を閉ざさず、
この目から苦しみを隠さなかったのだから。
03:11 なぜわたしは母胎で死ななかったのか、
生まれてすぐに息絶えなかったのか。
03:16 なぜ人知れず降ろされる胎児のように、
決して光を見ない赤子のようにならなかったのか。
03:12 なぜ抱きかかえる膝と、
乳を飲ませる胸があったのか。
03:13 それさえなければ、わたしはおだやかに横たわっただろう。
安らかに眠りについただろう。
03:14 自分たちのために廃虚を建て直した、
王や議官たちのように。
03:15 あるいは、その家々を白銀で満たした、
黄金をたくわえる君主たちのように。
03:17 かの地では悪人は乱暴をやめ、
疲れた者は休息をえる。
03:18 囚人は解放され、
こき使う者の声を聞かない。
03:19 小さい者も大きい者もともに過ごす。
奴隷も主人から自由になる。
03:20 なぜ惨めな者に光が与えられ、
心悩む者に命が与えられるのか。
03:23 神が道をさえぎり、
行く先の見えない者に。
03:21 彼らは死を望んでも叶わず、
埋もれた宝より死を掘り求める。
03:22 彼らは墓を見つけたら大いに喜び、
満足するだろう。
03:24 わたしのため息は食事に代わり、
うめきは水のように注ぎ出される。
03:25 恐れていたことが、
心配していたことがわたしに降りかかった。
03:26 わたしにはくつろぎも、おだやかさも、安らぎもない。
ただ苦しみだけがやって来る。

04:01 そこでテマン人のエリパズが答えて言った。

04:02 だれかが遠慮せずに話しかけたら、あなたは嫌がるだろうか。
しかし、話さずにはいられないのだ。
04:03 見よ、あなたは多くの人を教えさとし、
弱った手に力を与えてきた。
04:04 あなたの言葉はつまづく人を支えおこし、
よろめく膝をしっかりさせてきた。
04:05 だがいま、あなた自身にことが及ぶと怖じ気づき、
あなた自身にことが触れると悩んでしまう。
04:06 あなたはその信仰の厚さを自信にしたのではないのか。
その誠実な歩みを希望にしたのではないのか。
04:07 考えてもみよ、いったいだれが無罪のまま滅ぼされたか。
また、誠実で絶たれた者がどこにいる。
04:08 わたしの知るところでは、不法の畑を耕す者が、
騒ぎの種をまく者が、
その実を刈り取る。
04:09 彼らは神の息によって滅ぼされ、
神の怒りの息吹によって消し去られる。
04:10 ほえる獅子、
どう猛にうなる獅子、
若い獅子の牙は折られる。
04:11 雄獅子は獲物が足りずやせ細り、
雌獅子の子たちは散り散りにされる。
04:12 さて、ひそかにお告げが下され、
わたしはそのささやきを耳にした。
04:13 悪夢のさなか、
深い眠りが人々に訪れるころ、
04:14 恐れとおののきがわたしを襲い、
全身の骨を震わせた。
04:15 霊風が顔をなでて行き、
身の毛がよだった。
04:16 なにかが立ち止まったが、その様子はわからなかった。
ただ、その姿が目の前にあった。
沈黙のなか、わたしは声を聞いた。その声は言った、
04:17 「死ぬ運命にある人が神より正しくなれるか、
人が造り主より清くなれるか。
04:18 見よ、神はそのしもべたちを信じない。
天使たちの過ちさえ責められる。
04:19 まして、土くれの家に住む者、
ちりの上にいしずえを築く者、
蛾より早く押しつぶされる者は、言うまでもない。
04:20 彼らは朝から夕のあいだに打ち砕かれ、
心にとどめる者もいないまま、永遠に滅びる。
04:21 彼らの優れた天幕のひもは引き抜かれ、
なすすべなく死んでゆく」。

05:01 呼んでみよ、あなたに答える者がいるか。
あなたはどの聖者に頼るつもりか。
05:02 怒りは愚か者を殺し、
ねたみは無知な者を殺す。
05:03 わたしは愚か者が土地に根を張るのを見た。
しかし、わたしはすぐにその土地を呪った。
05:04 彼の子たちは平穏を失い、
門で打ち砕かれた。
助ける者はだれもいなかった。
05:05 彼の収穫は飢えた者に食べつくされ、
いばらのなかからでさえ奪われる。
渇いた者はその財産を狙う。
05:06 災いはちりから湧くものではなく、
大地から生じるものでもない。
05:07 火花が上向きに散るように、
人は生まれながらに苦しむ定めにある。
05:08 しかし、わたしなら神を求め、
進むべき道を神にゆだねるだろう。
05:09 神の大きなわざは計りしれない。
ふしぎなわざは数えきれない。
05:10 神は地に雨を降らし、
野に水を流す。
05:11 低い者を高いところまで、
嘆き悲しむ者を平穏なところまで引き上げる。
05:12 ずる賢い者のもくろみをはずし、
彼らの手に悪だくみを果たさせない。
05:13 賢い者のさかしらをつかまえ、
狡猾な者のはかりごとを地に落とす。
05:14 彼らは昼間でも闇につつまれ、
真昼にも夜のように手探りをする。
05:15 神は貧しい者を彼らの言葉の剣から救い、
また強い者の支配から救う。
05:16 このようにして不幸な者にも希望がもたらされ、
不義はその口を閉ざされる。
05:17 見よ、神が戒める人は幸いだ。
だからこそ全能者のとがめをさげすんではならない。
05:18 神は傷を負わせてもまた包み、
痛めつけてもまたその手で癒す。
05:19 六つの苦しみからあなたを救い、
七つの災いがあなたに触れないようにする。
05:20 飢饉のときは死から救い、
戦いのときは剣から救う。
05:21 あなたは舌のむちから遠ざけられ、
破滅が訪れても恐れないだろう。
05:22 滅びと飢えを笑いとばし、
地の獣にも恐れないだろう。
05:23 野の石と契りを結び、
野の獣と仲よくするだろう。
05:24 自分の天幕が安らげる場所と知り、
牧場を見まわしてなにひとつ失っていないことを知るだろう。
05:25 あなたの子孫はますます増え、
一族がまるで大地の草のようだと知るだろう。
05:26 収穫期にうず高く積まれた穀物の束のような、
充分な月日をすごしたあと、あなたは墓に入るだろう。
05:27 さあ、わたしたちの調べ上げたことは、このとおりだ。
よく聞き、自分で考えるといい。

06:01 そこでヨブは答えて言った。

06:02 どうかわたしの苦悩がきちんと量られ、
降りかかった災いとともに天秤にかけられるように。
06:03 いまとなれば、それは海の砂より重いだろう。
わたしの言葉が激しいのはそのためだ。
06:04 全能者の矢が刺さり、
わたしの霊は毒に冒される。
神の脅迫がわたしを攻め囲んでいる。
06:05 青草に立つ野ロバが鳴くか。
飼葉をまたいで牛が鳴くか。
06:06 味のない食べものは塩なしで食べられるか。
たまごの白身に味はあるか。
06:07 わたしはそんなものに触れたくない、
いやでたまらない食べものだ。
06:08 どうかわたしの願いが届き、
神が望みを叶えてくれるように。
06:09 神が戒めを許し、
御手を下してわたしを砕いてくれるように。
06:10 それこそが慰めになる。
わたしは容赦ない苦痛のなかで大いに喜ぶだろう。
わたしは聖なる者の言葉を拒んだことはないのだから。
06:11 わたしの力がどんなものだから、なお待たなければならないのか。
わたしの限界がどんなものだから、なお耐えなければならないのか。
06:12 この力が石のようだというのか。
この体が真鍮だというのか。
06:13 わたしにはすがるものはなく、
知恵も奪われてしまった。
06:14 絶望する友に愛をそそがない者は、
全能者への恐れを捨てたことになる。
06:15 あなたたち友は信頼を裏切った。まるで激流の川のように、
まるで氾濫した川のように。
06:16 その川は氷が溶けて黒ずみ、
雪が溶けて身をひそめる。
06:17 乾期には干上がり、
暑くなれば大地から涸れ果てる。
06:18 その川を伝ったキャラバンは順路をそらし、
荒れ果てた地に踏みこんで死滅する。
06:19 テマのキャラバンはそれを探し、
シェバの部隊もそれを求め、
06:20 彼らは信頼を裏切られて行きづまる。
荒れ果てた地にたどり着いて、あわてふためく。
06:21 いまや、あなたたちは役立たずだ。
災いを見て、恐がっている。
06:22 わたしは「なにかよこせ」と言ったか、
「あなたたちの財産からわけ前を贈れ」と、
06:23 「苦しめる者からわたしを救え」と、
「虐げる者に金品を渡してわたしを開放しろ」と言ったか。
06:24 教えてくれ、そうすれば大人しくしよう。
わからせてくれ、わたしの過ちがなんなのかを。
06:25 正直な言葉の力強さにくらべ、
あなたたちの非難は的はずれだ。
06:26 言葉じりをとらえたいだけなのか、
絶望した者の言葉は風にすぎないからと。
06:27 みなしごでさえくじで売り、
友でさえ売りものにするのか。
06:28 いまはためらわずに、こちらを見てほしい。
その顔に偽りをならべないと誓う。
06:29 考え直してもらいたい、
そこに不法があってはならない。
いま一度、考え直してもらいたい、
わたしの義がかかっているのだ。
06:30 この舌に不法は載っているか、
この口は害を味ききできないのか。

07:01 地上の人には重労働が課せられているではないか。
日々はまさに雇われ人のそれ。
07:02 奴隷のように日没を待ちこがれ、
金目当ての労働者のように賃金を待ち望む。
07:03 わたしへの報酬は空しい月日、
退屈な夜があてがわれる。
07:04 床につけば、
「いつ起きられるのか、朝はまだか」と、
夜明けまで寝返りを打ちつづける。
07:05 わたしの肉はうじ虫と土くれに覆われ、
皮は傷つき、うみが出る。
07:06 日々ははたより速く、
絶望のままに過ぎて行く。
07:07 忘れないでほしい、わたしの命は息にすぎないことを。
この目がふたたび幸いを映すことはない。
07:08 だれの目もわたしを認めることはなく、
あなたが目をとめても、もうわたしはいないだろう。
07:09 まるで雲が薄れ、消え去るように。
陰府に下る者は二度と上がることはない。
07:10 ふたたびその家に帰ることはなく、
住みかさえ彼を忘れる。
07:11 だからこそ、わたしは沈黙を破らずにはいられないのだ。
心の苦悩のままに語り、
魂の苦痛のままに訴えたい。
07:12 わたしが海だというのか、海の怪物だというのか、
あなたが見張りを立たせるのは。
07:13 わたしが「寝床は心地よい、
床は気持ちが落ちつく」と思っても、
07:14 あなたは悪夢でおどかし、
幻でおびやかす。
07:15 いっそのこと絞め殺してもらいたい、
骨にとどまるより死を選びたいのだ。
07:16 こんな命はもうたくさんだ、
いつまでも生き長らえたくはない。
ほうっておいてほしい、わたしの命は息にすぎないのだから。
07:17 人とはなんなのか。あなたが多くを与え、
心をとめ、
07:18 朝ごとに訪れ、
絶え間なく試みる人とは。
07:19 いつになったらあなたの監視は離れるのか。
せめてつばを飲むわずかな間ぐらいは、ひとりにしてくれるのか。
07:20 人を見張る者よ、わたしがどんな過ちを犯したというのか。
なぜわたしにねらいを定め、
重荷とするのか。
07:21 なぜ反抗を許さず、
不義を取り除かないのか。
いまや、わたしはちりに伏せる。
あなたが捜し求めても、もういないだろう。

08:01 そこでシュア人のビルダデが答えて言った。

08:02 いつまでそんなことを言っているのか。
あなたの言葉は激しい風のようだ。
08:03 神が法を曲げるか、
全能者が義を曲げるか。
08:04 あなたの子たちが罪を犯したから、
神はその反抗に裁きを下したのだ。
08:05 もし熱心に神を求め、
全能者に願うなら、
08:06 そして清く正しい人ならば、
神は必ずその身を起こし、
あなたの義の住みかをもとどおり建て直す。
08:07 あなたのはじまりは小さくても、
終わりは大きく栄える。
08:08 先の世代を尋ねよ、
父祖が学んだことを確かめてみよ。
08:09 (わたしたちはほんの昨日からの存在で、なにもわかっていない。
わたしたちの地上の日々は影のようなものだ。)
08:10 祖先たちは教え、語り、
心からの言葉を告げるだろう。
08:11 沼地もなくパピルスが茂るか。
水もなく葦が茂るか。
08:12 そうでなければ、芽が出たばかりでも、切られもしないうちに、
どんな草よりも早く枯れてしまう。
08:13 神を忘れた者のたどる道はこうだ。
神を無視する者の希望は消え失せる。
08:14 彼らの頼みの綱は切れやすく、
よりどころはくもの巣だ。
08:15 彼らの家は寄りかかれば支えられず、
すがりつけば重さに耐えられない。
08:16 日なたで葉を茂らせ、
若枝を畑にのばし、
08:17 根を岩にからませ、
岩場からでさえ芽を出す。
08:18 しかし、いったん出かけると、
土地から「あなたなど見たこともない」と縁を切られる。
08:19 見よ、これが彼らの成れの果てだ。
その土地からは、ほかのものが芽を咲かせる。
08:20 見よ、神が正しい者を見捨てることはなく、
悪事をはたらく者の肩を持つこともない。
08:21 神はあなたの口をいつまでも笑みで満たし、
その唇に歓喜をもたらす。
08:22 あなたを憎む者は恥をさらし、
悪人の天幕は消え失せる。

09:01 そこでヨブは答えて言った。

09:02 もちろん、そのくらいのことはわたしでもわかっている。
しかし、人は神にたいして正しくありえるだろうか。
09:03 もし神と論争できたとしても、
人は千に一つも答えられない。
09:04 神は心賢く、力強い。
かたくなに神に逆らって、だれが無傷でいられるだろう。
09:05 人の知らないうちに神は山を動かし、
怒ったときはそれをひっくり返す。
09:06 人のいない場所で神は大地を震わせ、
地の柱はゆらぐ。
09:07 神が命じれば太陽は昇らず、
星もまた覆い隠される。
09:08 神はひとり天をのばし、
海の波を踏みつける。
09:09 神はおおぐま座、オリオン座、プレアデス、
南の星座をつくる。
09:10 神は計りがたい大きなことを、
数え切れないふしぎなことをする。
09:11 見よ、神がそばに来てもわたしには見えず、
通りすぎても気づかない。
09:12 見よ、神が奪い去るとき、
だれもあらがえず、
口答えも許されない。
09:13 神が怒りをこらえることはなく、
ラハブに味方する者もその足もとにひれ伏す。
09:14 まして、わたしのようなものがどうして神に答え、
神に訴える言葉を選べるか。
09:15 たとえ正しくても、神を訴えることはできない。
わたしは戒める者にゆるしを乞うほかにない。
09:16 たとえ呼びかけてやって来たとしても、
神がわたしの言葉に耳を貸すとは思えない。
09:17 神は暴風で吹き飛ばし、
理由もなく傷を何倍にも増やし、
09:18 息をつく間も与えず、
苦しみをあふれさせるだろう。
09:19 力を問えば、見よ、神は絶大だ。
正しさを問えば、だれであれ神を裁きにかけられない。
09:20 たとえわたしが正しくても、みずからの口から糾弾される。
たとえわたしが潔白でも、神から罪を宣告される。
09:21 わたしは潔白だが、
自分がわからなくなった。
もう生きてなどいたくない。
09:22 どちらも同じなのだ。
神は正しい者と悪しき者のどちらをも滅ぼす。
09:23 とつぜんの災害が人の命を奪っても、
神は無垢な者の苦しみをあざ笑っている。
09:24 地が悪人の手に落ちても、
神は裁判官を目隠ししている。
もしちがうと言うのなら、これはだれのしわざなのか。
09:25 わたしの日々は飛脚より速く、
幸せを見ることなく走り去った。
09:26 川面を滑る葦の舟のように、
獲物に舞い降りる鷲のように過ぎ去った。
09:27 このやるせない気持ちを忘れよう、
悲しい顔をぬぐい元気を出そうとしても、
09:28 苦しみのひとつひとつが恐怖を思い出させる。
あなたが無罪を認めないと、わかっているのだから。
09:29 どうせ有罪にされるのだから、
空しく労することはない。
09:30 雪で体を洗い、
灰汁で手を清めても、
09:31 あなたはわたしをへどろの穴に突き落とす。
着物でさえわたしを嫌うだろう。
09:32 彼はわたしのように人ではない。わたしが彼を訴え、
二人が伴って裁判にのぞんだとしても、
09:33 ふたりの上に均しく手を置く、
仲裁者はどこにもいない。
09:34 どうか仲裁者が神の杖を取り上げるように。
どうか神の恐怖がわたしをおびやかさないように。
09:35 そうなればやっと、対等に話し合えるようになるだろう。
しかし現状では、わたしはそのようにはなれない。

10:01 もう生きることに疲れてしまった。
やるせない気持ちにまかせ、
にがにがしい心のままに語りたい。
10:02 神よ、わたしを有罪と決めつけないでもらいたい、
わたしと争う理由を教えてもらいたい。
10:03 御手でつくった者を押しつぶし、
軽蔑するにもかかわらず、
悪人のたくらみにはほほ笑んでいる。それでよいのか。
10:04 あなたは肉をまとった目を持つのか、
人が見るようにあなたも見るのか。
10:05 日々は人の日々と、
年月は人の年月と同じなのか。
10:06 だからわたしの不法を遅れて問い立て、
わたしの罪を遅れて調べ上げるのか。
10:07 わたしが悪人でないことを知っているのに。
その手から助け出せる者がいないとわかっているのに。
10:08 あなたの手が型どり、つくったというのに、
なぜ急に考え直して痛めつけるのか。
10:09 どうか思い出してもらいたい、あなたがわたしを土くれのように練り上げ、
ふたたびちりに還すのだと。
10:10 あなたがわたしを乳のように注ぎ出し、
チーズのように固めたのだと。
10:11 あなたが皮と肉を着せ、
骨と筋を編み合わせ、
10:12 命と親愛をもたらしたのだと。
あなたのわざがわたしの霊を守ったのだと。
10:13 しかし隠していたその本心が、
わたしにはわかってしまった。
10:14 たとえ罪を犯しても、あなたは目をつけるだけで、
悪を正したりはしない。
10:15 わたしは有罪なら災いをふりかけられる。
しかし、無罪でも頭を上げられない。
恥で満たされ、
悩みで窒息させられるからだ。
10:16 もし頭を上げようものなら、あなたは獅子のように襲い、
その絶大な力をくりかえし見せつける。
10:17 あなたはいよいよ激しく怒り、
次つぎと保証人を取りかえ、
波のように軍勢をけしかける。
10:18 なぜわたしを母の胎から取り上げたのか。
そのとき息絶えていれば、だれにも知られず、
10:19 存在しなかったかのように、
胎から墓へと運ばれたのに。
10:20 わたしの余生は、
わずかしか残されていない。
だから、ひとりにしてもらえないか、せめて一息つかせてはもらえないか。
10:21 二度ともどれない暗闇の地へ、
わたしが下りる前に。
10:22 真夜中のような、
秩序のない、
光すら闇のような地へ下りる前に。

11:01 そこでナーマ人のゾパルが答えて言った。

11:02 それだけまくし立てられては、答えないわけにはいかないだろう。
口が達者なら正しいわけではない。
11:03 むだ口が人を黙らせることはなく、
たわ言を吐いて知らん顔はできない。
11:04 あなたは「わたしの主張は正しい。
あなたの目にも潔白なはずだ」と言うが、
11:05 神がその言葉にたいして、
なんと答えるか聞きたいものだ。
11:06 神がその知恵の
裏表を明らかにすれば、
あなたは罪の一部を見逃されていたと知るだろう。
11:07 あなたは神の深さを計りつくし、
全能者の果てを調べ上げることができるのか。
11:08 天より高いものに、なにができる。
陰府より深いものを、どうして知りえる。
11:09 その大きさは地より長く、
海より広い。
11:10 神が引ったて、
裁きにかけるとき、あらがえる者はいない。
11:11 なぜなら神は人のうそを見抜き、
不法を野放しにしないからだ。
11:12 生まれたときはロバの子のように愚かでも、
人は成長して賢くなれる。
11:13 もしあなたが神を心から祈り、
神に手を広げるなら、
11:14 不法を手から放し、
不義を天幕から追い払うなら、
11:15 そのときこそ、恥じることなく顔を上げ、
恐れることなく立ち上がれるだろう。
11:16 そのときこそ、悲しみを忘れ、
それを流れ去った水のように感じるだろう。
11:17 日々は真昼より明るく、
闇も朝のようになるだろう。
11:18 希望を持って不安をなくし、
余裕を持って安らぎをえるだろう。
11:19 横たわってもおびやかす者はなく、
助言を求める多くの者に囲まれるだろう。
11:20 だが、神に逆らう者の目はかすむ。
彼らは逃げ場を失い、
その希望は消えかかった息のようだ。

12:01 そこでヨブは答えて言った。

12:02 ごもっとも、あなたたちこそ賢者だ。
あなたたちが死ねば知恵も消えるほどに。
12:03 しかし、わたしにも考えがあり、
決して劣るものではない。
だれにでもそのくらいの知恵はあるだろう。
12:04 わたしは友の笑いものだ。
神に呼びかけ、答えをもらった者、
正しく過ちない者が、慰みものになっている。
12:05 平穏に暮らす者はこう考えがちだ。人の不幸や、
足を滑らせた者には嘲笑がふさわしい、と。
12:06 略奪者の天幕は栄えている。
神を怒らせる者も、
神を支配しようとする者も安全だ。
12:07 地の獣に尋ねよ、教えてくれるだろう。
空の鳥もあなたに告げるだろう。
12:08 大地に問いかけよ、教えてくれるだろう。
海の魚もあなたに語るだろう。
12:09 彼らはみな知っている。
この世のすべてはヤハウェの手によってつくられたことを。
12:10 生きものの命、そして人の命も、
ひとつ残らず御手のなかにあることを。
12:11 口が食べものを味わうように、
耳は言葉をわきまえるべきだ。
12:12 年老いた者には知恵があり、
長く生きた者には分別がある。
12:13 知恵と力は神にあり、
思慮と分別は神にある。
12:14 見よ、神が壊すとき建て直すことはできず、
閉じこめるとき放つことはできない。
12:15 見よ、神が水を止めれば干上がり、
水を放てば地が沈む。
12:16 力と知恵は神にあり、
迷う者も迷わす者も神の思うがまま。
12:17 神は議官を愚かにし、
裁判官を狂わせる。
12:18 王の帯を脱がし、
下帯を巻きつける。
12:19 祭司の服を脱がし、
権威に泥をぬる。
12:20 信仰の厚い者からも言葉を奪い、
長老の分別を奪う。
12:21 君主に軽べつを浴びせ、
強い者の帯を切る。
12:22 闇の底をあらわにし、
死の闇に光をあてる。
12:23 国を興してまた滅ぼし、
国を広げてまた狭める。
12:24 地の長の分別をなくし、
彼らを道なき荒野にさまよわせる。
12:25 彼らの光を奪い、闇のなかを手探りさせ、
酔っ払いのようにふらつかせる。

13:01 見よ、そのようなことはこの目で見て、
この耳で聞いて、よくわかっている。
13:02 あなたたちの知っていることは、わたしも知っている。
あなたたちに劣りはしない。
13:03 だが、わたしは全能者に語りたいのだ。
神に抗議したいと思うのだ。
13:04 あなたたちはみな、偽りを塗りつける、
やぶ医者だ。
13:05 知恵があるのなら、
どうか口をつぐんでほしい。
13:06 わたしの抗議を聞き、
訴えに耳を傾けてもらいたい。
13:07 あなたたちは神のために不法を語り、
神のためにうそをつくのか。
13:08 神にへつらい、
神のために言い争うのか。
13:09 神があなたたちを試したらよいのだが。
あなたたちは人をあざむくようには、神をあざむけない。
13:10 たとえひそかにでもへつらうなら、
神はあなたたちを責めるだろう。
13:11 神の威厳がおびやかし、
恐怖が降りかかるだろう。
13:12 あなたたちの常套句は灰の格言にすぎず、
弁護は土くれの盾にすぎない。
13:13 どうか静粛に、そしてわたしひとりに語らせてもらいたい。
この身がどうなろうとかまわない。
13:14 肉をこの歯にかませ、
命をこの手に置こう。
13:15 見よ、神が殺そうとも、
見込みがなくとも、
この道を神に申し立てよう。
13:16 それすら、わたしにとっての救いとなる。
なぜなら神を知らない者は、神の前に立つことはないのだから。
13:17 よく聞け、わたしの言葉を。
耳におさめよ、わたしの宣言を。
13:18 いまこそ主張を述べる。
わたしは自分の正しさがわかっている。
13:19 だれがわたしと議論し合えるだろう。
もし言い負けたなら、そのときは黙って死んでもよい。
13:20 神よ、ふたつだけ守ってほしいことがある。
そうすれば御前から逃げ隠れることはしない。
13:21 まず、御手をわたしから遠ざけ、
恐怖でおびやかすのはやめてほしい。
13:22 そして、あなたが呼んでほしい。わたしが返事をする。
あるいは、わたしが呼ぶから、あなたは返事をしてもらいたい。
13:23 いったいどれほどの罪と悪があるというのか。
わたしの不義と罪を教えてもらえないか。
13:24 なぜ、御顔を隠し、
わたしを敵と見なすのか。
13:25 風に散る枯葉をおどし、
乾いたもみ殻を追い回すのか。
13:26 つらいことを書きしるし、
いまなお若い日の罪を負わせるのか。
13:27 あなたはわたしに足かせをはめ、
行く先々を見張り、
行動の自由を奪う。
13:28 このようにされたら、だれでも腐ったもののように、
虫に食われた衣のように、弱り果てるほかない。

14:01 人は女から生まれ、
その命は短く、苦しみに満ちている。
14:02 花のように咲いては刈られ、
影のように移ろってはとどまらない。
14:03 あなたはこのような者にも目をとめ、
裁きにかけるのか。
14:04 清いものが汚れたものから生まれるだろうか。
いや、ありえない。
14:05 人の日は定められ、
月の数もあなたによる。
あなたは人には越えられない境をもうける。
14:06 御目を人から離し、くつろがせてほしい。
雇われ人のような日々でもまだ楽しめるように。
14:07 少なくとも木には希望がある。
切られてもまた新芽を吹き、
若枝は絶えることがない。
14:08 地に張った根が老いても、
株が朽ちても、
14:09 水のうるおいで芽を出し、
苗木のように枝をのばす。
14:10 しかし、人は死んだら力を失い、
息絶えたらどこかに行ってしまう。
14:11 海の水は涸れ、
川は渇いて干される。
14:12 人は倒れて立ち上がれず、
天のなくなるまで起き上がれず、
眠りから覚めることはない。
14:13 わたしを陰府に隠し、
あなたの怒りがやむまで人目から遠ざけてもらいたい。
時を見計らって、ふたたび心にとめてもらいたい。
14:14 人は死んでしまえば蘇ることはない。
わたしは解放のときが来るまで、
苦役の日々を耐えよう。
14:15 あなたに尋ねられれば、わたしは答える。
御手でつくった者をあわれむなら、
14:16 わたしの歩みを数えることなく、
罪を見逃し、
14:17 反抗を袋に封じこめ、
不法を覆い隠してほしい。
14:18 しかし、山が倒れて崩れ、
岩がその土地から移され、
14:19 水が石を削り、
大水が地のちりを洗い流すように、
あなたは人の望みを絶つだろう。
14:20 あなたはいつまでも人を打ち負かし、追いやる。
あなたは人の顔かたちを変え、追い払う。
14:21 人が尊ばれても神は知ることなく、
卑しくなっても神は気づかない。
14:22 人の体はただ痛みだけをおぼえ、
魂はおのれのために嘆くことしかできない。

15:01 そこでテマン人のエリパズは答えて言った。

15:02 賢者が風のような知識を述べ、
その腹を東風で膨らますだろうか。
15:03 無益な言葉で論じ、
役に立たない論議をするだろうか。
15:04 あなたは神への恐れを捨て、
神への祈りを邪魔している。
15:05 不義がその口を駆り立て、
ずる賢い舌を選びとっている。
15:06 わたしではなく、みずからの口があなたに罪を定め、
みずからの唇が反証をあげている。
15:07 あなたは最初の人として生まれたのか。
山より先に世に出たのか。
15:08 神の助言を聞き、
知恵をひとりじめにしたのか。
15:09 あなたの知っていることで、わたしたちの知らないことがあるか。
あなたの見識がわたしたちにはないのか。
15:10 わたしたちのなかには白髪の者、年老いた者があり、
あなたの父より年上なのだ。
15:11 神の慰めやその優しい言葉に、
満足できないのか。
15:12 なぜ心を乱し、
目をぎらつかせるのか。
15:13 怒りを神に向け、
そのように口走るのか。
15:14 どうして人が清くありえよう。
どうして女から生まれた者が正しくありえよう。
15:15 見よ、神は聖人すら信じることなく、
天もその目には清く映らない。
15:16 まして忌まわしく、汚れ、
不義を水のように飲む人は、言うまでもない。
15:17 あなたに語ろう、よく聞け。
わたしの知るかぎりを告げよう。
15:18 (賢者たちが語りつぎ、
父祖たちが隠さなかったことを。
15:19 その地は彼らだけに与えられ、
よそ者が通りすぎることはなかった。)
15:20 悪人はその一生を苦しみもだえ、
残酷な者の生きる年数は限られている。
15:21 彼らの耳には恐ろしい音が響き、
繁栄したときには略奪者が襲う。
15:22 暗闇から逃れることをあきらめ、
剣のえじきになる。
15:23 食べものを求めてさまよい、
暗闇の日が待ち受けていることを知る。
15:24 戦いを挑む王のような苦痛と苦悩が、
おびやかし、打ちのめす。
15:25 なぜなら、彼らは神に手向かい、
全能者を見下したからだ。
15:26 肩をこわばらせ、
厚い盾をかざして神に突撃したからだ。
15:27 彼らは顔を脂ぎらせ、
腹をぜい肉でつつんでいるが、
15:28 荒れ果て、
人も住みつかない、
やがて瓦礫と化す街に住むことになる。
15:29 富はなく、財産はすぐに失い、
家畜は土地に育たない。
15:30 彼らは暗闇から逃れられない。
炎が若枝をこがし、
風が花を散らす。
15:31 [彼らはみずからだまされ、空しいことを信じ、
空しい報いを受ける。]
15:32 その若枝は時期が訪れる前に熟し、
葉は茂らない。
15:33 ぶどうの木のように未熟な実を落とし、
オリーブの木のように花を散らす。
15:34 神を知らない者の集まりは実りを結ばず、
わいろの天幕は火に焼きつくされる。
15:35 彼らは苦しみを宿し、災いを産み落とす。
その胎は偽りをはらませる。

16:01 そこでヨブは答えて言った。

16:02 そんなことはもう聞き飽きた。
あなたたちはみな、ひどい見舞い人だ。
16:03 風のような言葉に終わりがあるだろうか。
なにがあなたたちを怒らせ、議論に駆り立てるのか。
16:04 もし立場が換わっていたら、
わたしもあなたたちのように語れただろうに。
言葉を重ねて非難し、
かぶりを振ることもできただろうに。
16:05 きっとこの口で励まし、
唇で慰め、安心させただろうに。
16:06 たとえわたしが語ってもこの苦しみはやまず、
黙ってもこの苦しみは去らない。
16:07 いまではもう、神よ、あなたはわたしをぼろぼろにすり減らし、
仲間や一族をみな奪い去った。
16:08 絞り上げられ、痩せこけたこの姿は証人になり、
原告になり、
わたしに向かって反証をあげる。
16:09 神の怒りがわたしを引き裂き、虐げる。
彼は歯ぎしりするほど怒り、
わたしの敵は鋭い目を向ける。
16:10 彼らはわたしに向かって大きく口を開け、
軽べつをこめてほほを打ち、
束になって攻めてくる。
16:11 神はわたしを信仰心のない者にひき渡し、
悪を行う者の手になげうつ。
16:12 神は平穏だった暮らしを切り裂き、
わたしの首根っこを押さえてばらばらに壊した。
わたしをまととして立たせ、
16:13 神の射手がとり囲んだ。
容赦なく腎臓をひき裂き、
胆汁は地に流れ出る。
16:14 神はくり返し打ちのめし、
戦士のように襲いかかる。
16:15 わたしの肌は荒布を縫いつけられ、
角はちりに押しつけられた。
16:16 わたしの顔は泣いて赤く腫れ、
まぶたは深い闇が覆う。
16:17 この手に暴虐はなく、
祈りは清かったというのに。
16:18 大地よ、わたしの血を覆い隠すな、
わたしの叫びに休む場を与えるな。
16:19 見よ、いまでも天にはわたしの証人があり、
高いところにはわたしの保証人がいる。
16:20 親愛なる仲裁者よ、
この目が神を仰いで涙を注ぐように、
16:21 どうか人のために神にたいして異議をとなえ、
人の子のためにその友と言い争ってもらいたい。
16:22 まもなく、
わたしは帰れない旅路につくのだから。

17:01 わたしの霊は絶え果て、
日々は燃え尽き、
あとは墓だけが残されている。
17:02 あざける者に囲まれ、
わたしは敵意を目のあたりにする。
17:03 担保を与えよ、神よ、あなた自身が保証になってもらいたい。
ほかの誰がわたしと契約を結ぶだろうか。
17:04 あなたは友人たちの心を閉ざして、愚かにした。
だから、彼らは成功をおさめることはない。
17:05 ほうびをもらうために友を非難する者は、
子孫の目がつぶれる。
17:06 神はわたしをみなの笑い種にし、
顔につばを吐かれる者にした。
17:07 この目は悲しみでかすみ、
手足は影のようだ。
17:08 無垢な者が神を信じない人を怒ることに、
正直な者は驚く。
17:09 しかしそれでも、正しい者はおのれの道をつらぬき、
手の清い者はますます力強くなる。
17:10 友よ、あなたたちがふたたびひとり残らず集まっても、
そこに賢者はいないだろう。
17:11 わたしの日々は過ぎ去り、考えも、
心からの願いも砕かれた。
17:12 その者たちは夜を昼に変え、
闇のなかで光が近いことを告げるだろう、
17:13 もしわたしが陰府を我が家として望み、
暗闇のなかに寝床をのべるならば。
17:14 また、もし不正の穴に向かって「わたしの父よ」と言い、
うじに向かって「わたしの母よ、姉妹よ」と言うならば。
17:15 どこにわたしの希望は残されているのか、
誰がわたしの希望を認めるだろうか。
17:16 それはわたしとともに陰府に下り、
わたしとともにちりの上に落ちる。

18:01 そこでシュア人のビルダデは答えて言った。

18:02 いつまで言葉のさぐり合いをつづけるのか。
きちんと考えた上で、それから話し合うべきだ。
18:03 なぜわたしたちは獣のように見なされ、
その目に愚か者として映るのか。
18:04 怒りでみずからを引き裂く者よ、
あなたのために地が見捨てられ、
岩がその場所から移されるだろうか。
18:05 悪人の光は消え、
火の炎は輝かない。
18:06 天幕の灯は暗くなり、
頭上のともし火は消える。
18:07 その力強い歩みは歩幅を狭められ、
みずからの策におぼれる。
18:08 あみに足を捕えられ、
網目の上をさまようことになる。
18:09 罠にかかとを捕らえられ、
落とし穴にはまりこむ。
18:10 なわは地に隠されていて、
行く手に仕掛けが置かれている。
18:11 四方八方から恐ろしいものに脅かされ、
どこまで行っても追いかけ回される。
18:12 災難は悪人をねらいすまし、
災害はすぐそばで待ちかまえる。
18:13 病が皮膚を食いつくし、
死の初子がその手足をむしばむ。
18:14 よりどころの天幕から引き離され、
恐怖の王の前に追いやられる。
18:15 その天幕には火が放たれ、
硫黄がまかれる。
18:16 下ではその根が枯れ、
上ではその枝が干からびる。
18:17 思い出は地上から失われ、
その名は道から消える。
18:18 光から暗黒へと追いやられ、
この世から追放される。
18:19 民のなかで子孫を残せず、
住居にはだれも残らない。
18:20 西の者はその運命におどろき、
東の者は恐怖につかまえられる。
18:21 これが悪人の住まい、
これが神を知らない者のいた場所だ。

19:01 そこでヨブは答えて言った。

(ここまで)


脚注:

[1] 01:01にもどる “God(神)”はヘブライ語の“Elohim(エロヒム)”にあたる。

[2] 01:06にもどる “Yahweh(ヤハウェ)”は神の正式な名前。ほかの翻訳では、すべて大文字で“LORD(主)”と訳されることもある。

[3] 07:09にもどる “陰府”は死んだ者の場所のこと。

[4] 11:08にもどる “陰府”は死んだ者の場所のこと。

[5] 14:13にもどる “陰府”は死んだ者の場所のこと。

[6] 17:13にもどる “陰府”は死んだ者の場所のこと。

[7] 17:16にもどる “陰府”は死んだ者の場所のこと。

[8] 21:13にもどる “陰府”は死んだ者の場所のこと。

[9] 24:19にもどる “陰府”は死んだ者の場所のこと。

[10] 26:06にもどる “陰府”は地下の世界、または墓のこと。

[11] 26:06にもどる “Abaddon”は破壊者のこと。(訳注:辞書的な意味では奈落、地獄の底のこと)

[12] 28:16にもどる または、鉱物のラピス・ラズリ(瑠璃)。

[13] 28:28にもどる “Lord(主)”はヘブライ語写本に記された“Adonai(アドーナーイ)”の訳語。

[14] 03:08にもどる 41:01にもどる “レビヤタン”はワニ、またはそれに似た生物のこと。

[15] 42:11にもどる 原典では kesitah とあり、お金の単位のこと。おそらく銀と思われる。


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