B.R.アンベードカル『ブッダとそのダンマ』を読みました。熱い宗教書です。おもしろかった。
いきなり、ゴータマ・ブッダの出家はコーリヤ国とシャカ族の内紛のごたごたに巻きこまれたことが理由だった、という創作小説からはじまります。わたしは度肝を抜かれましたよ。だって仏伝の「書き換え」を行っているのだから。
ほかにもブッダが説いたあれこれが、ことごとく現代的・科学的に「書き換え」られていきます。たとえばカルマ論について、仏教は、ブラーミズムとヒンドゥーイズムとはちがうと主張されます。両者のカルマ論を同一視してはいけない、と。
ブッダの前世カルマ論は科学的である。彼は前世カルマの遺伝性など信じなかった。誕生は発生学的であり、子供の受ける遺伝は総てその両親から受け継ぐと考えていたブッダにそんなことがどうして信じられよう。
さらに。
前世カルマが来世を支配するというヒンズー教義は正に邪悪なものである。このような教義を作り上げた目的は何であったのか。考えられる唯一の目的は、国あるいは社会が貧しく身分の低い人びとの悲惨な状態に対し責任逃れするためである。(略)大慈悲の人として世に遍く知られるブッダがこのような教義を擁護したなど想像することすらできない。
ここまでくると痛快で、わたしは「もっとやれ!」と思いました。もちろん、いたずらに「書き換え」るばかりじゃなくて、仏典をきちんと読みこんだ引用もほどこされます。仏教が神の存在を否定したというのは、おそらく行きすぎですけども、霊魂を否定する(あるいは霊魂について語らなかった)のはそのままです。
アンベードカルは、ヒンドゥー教は迷信と不合理に満ちていて現代科学の批判に耐えられない、いまこそ合理性をもった仏教がインド国家と宗教を救うのだ! と言います。ブッダは道徳性の確立と、平等社会の実現を目指し、サンガ(修行者の集まり)は理想社会のモデルであり、ビク(修行者)は理想社会建設の奉仕者である、うんぬん。ヒンドゥー教の破棄、下層不可触民の地位向上を目的として、仏教をパワフルに「書き換え」てゆく。
『捏造された聖書』を読んだばかりで言うのもなんですが、宗教ってむかしの形のままでは使い勝手が悪いんですよね。現代に通じるようにするためにはアレンジするしかない。だから「書き換え」る、いまのインドを救うために! 宗教は、まさに、ここにある。そう思います。
アーリア・ナーガルジュナこと佐々井秀嶺さんの巻末コメントも熱かった。2004年に「この義いかん!!」なんて書く日本人はこの人をおいてほかにないでしょう。わたしはテレビで『NONFIX 男一代菩薩道~インド仏教の頂点に立つ男~』を見て以来のファンです。
いかにインド民衆、いかにインド仏教徒下層民衆をして、創価学会に入り、いかに日蓮宗、天台宗、真宗、禅宗、天理教、霊友会等々に走り入信するも、その全インド仏教徒の中心的生命は、不動像、不屈像、不退像のビーム・アンベードカル大菩薩であり、その全生涯にわたる思想行動であり、その大蔵経に匹敵する一切著書であり、その最勝最大のバイブルは『ブッダとそのダンマ』であるということを忘却することなかれ!!
下手にさわると火傷しそうなくらいの絶賛です。でも、インド下層民の悲惨な事情を知っていると、佐々井秀嶺さんはこれでも抑え気味なんだとわかります。
