事実より伝説の方が面白いなら伝説を残す。それが西部のやり方です。

 消費しやすく、わかりやすく、心地よく、都合のいい情報はうそだろうがなんだろうが広まる。受け手の多くがそういう情報を求めるからでもあるし、送り手の多くがそういう情報を発信したがるからでもある。科学的な「事実」や、人の数だけ存在する歴史的な「事実」をきちんと調べるのはたいへんだけど、断片的な情報からおもしろおかしい「伝説」をつくるのは技術さえあればむずかしいことではない。

 いまにはじまったことじゃないですが、最近はこんなことをぼんやり考えております。なんとなく、ジョン・フォード監督の傑作映画『リバティ・バランスを射った男』のセリフを思い出します。二種類に翻訳してみます。

This is the west. When the legend becomes fact, print the legend.
(通釈)ここは西部です。検証のすえに伝説のうそが消えて、事実がわかったとしても、新聞の記事になるのは伝説の方です。
(台詞調)事実より伝説の方が面白いなら伝説を残す。それが西部のやり方です。

 この「西部」のところはいろいろ替えられますね。たとえば「オタク業界」とか「トリビア」とか「ブログ」とか。いや、思えば、孔子が理想とした周公の政治は、実は孔子がつくったもの、つまりはでっちあげだったわけです。孟子の語る堯舜も、墨子の語る禹王も、道家の語る黄帝も、パウロの語るイエスも、みんな事実ではなく伝説だった。もしこの「西部」をちがうことばに替えるなら「人の世」がぴったりなのかもしれません。

リバティ・バランスを射った男 [DVD]

カテゴリー: 雑記   パーマリンク

コメントは受け付けていません。