『腐蝕』を読んだ

 知人からお借りして『腐蝕』を読んだ。背表紙のかんたんな解説で侵略もののホラーだと思って読んだらびっくりした。ふつうホラーだったらじわじわゆっくり侵されていくだろうが、この小説は展開が早すぎる、速すぎる。あやしい黒い影が現れたら、あれよあれよという間に世界崩壊、全力疾走してへとへとに疲れて休む暇なくまたダッシュ、泣いたりほっとしたり絶望したり希望を持ったり、いろいろと飛ぶように過ぎて行く。飽きないが、ぞくっとこわさを感じる作品ではないかもしれない。

 アイデンティティの喪失をめぐるお話だからこそ、ラストの場面はうまいと思った。主人公はようやく自己同一性を手に入れたものの、意思を持った人型の強化服のなかにすっぽり収まるのだ。キャラクターの配置はわかりやすく図式的で、お話をふくめ映像化に向いていると思う。

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