『ゲド戦記』のざっくり感想

 いま『ゲド戦記』を見てきた。まだ興奮は冷めてないけれど、ざっくり感想。

 面白い! これこそ神話だ。父の宮崎駿はたかが線画にすぎないキャラクターに命をがけでエロスを注入した演出家だけれど、子の宮崎吾朗はエロスをさっぱり捨てた。なぜ捨てたのか? それが神話を描く常套手段だからだ。これについては『死者の書』の感想に書いたのでくり返さない。おそらく、同じ土俵で勝負しても観客のこころに住まう宮崎駿の幻想には勝てない、という判断もあったんだろう。ラストの高い塔の上から飛び去るものにつかまる場面を『天空の城ラピュタ』のシータ救出と対照的な構図にしたりなど、せっせと父殺しをやってるのは、さすがの一言。

 残念だったのは、物語の構造や語り口がテーマとがっちり組み合ってなかったので、神話のような時代を超える強度があまり感じられなかったこと。たくさんの神話民話をごちゃまぜにした物語だから、仕方ないとも言える。あと、宮崎駿ほどアニメーションに愛されていなく、高畑勲ほどアニメーションを愛していないところが、監督のキャリアの薄さを思わせた。もうちょっと深いアニメーションとのまぐわいが見たい。次の作品に期待。

 同居人には不評だったけれど、この作品は「明治チョコレート効果 カカオ99%」なんだよ、と言ったら納得していた。アニメーションのJOYの部分を求めすぎると肩透かしを食っちゃうだろう。きびしいことを言えば『ゲド戦記』が楽しめなかった人はアニメーションを見る才能が、センスが欠けている。こういう人は、喜八郎『死者の書』を見て「感情移入できない!」と怒るようにナンセンスだし、アニメーションの生(=エロス=JOY)だけを認めて、死(=神話性=シニフィエを欠いたシニフィアン=りんたろう)を認めない、まるでこの作品の主人公アレンに似ている。生と死をあわせ持ち、決して分かつことのできないものがアニメーションにほかならない。

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