『死者の書』とアニメ

 ひきつづき折口信夫『初稿・死者の書』を読書中。これはアニメーションの原作にもってこいじゃないかな、と思いながら読んでいる。月の「こう こう こう」と照る音や、死者の「しと しと しと」という足音、(うぐいす)の「ほゝき ほゝきい」という鳴声などのさまざまな音の表現といい、聖なる俤人(おもかげびと)が光とともに、また死者が闇とともにそこにある姿といい、映像化する上でおいしい素材がたっぷりつまっている。奈良という時代設定も、一から描けるアニメのほうが実写より融通が利く。二上山に輝く光の寺院をCG合成したら興ざめもいいところだろう。人物の無名性、透明性という点でも、実写では役者の人としての生きざまがどうしても画面に出てしまうので、二重の虚構であるアニメが向いているように思う。

 問題は内容の普遍性と時代性だが……これは上品なやりかたじゃないがやや誇張をもってフェミニズムと結びつければ、なんとかなるかもしれない(怒られそうな表現ですが)。せつないラブ・ストーリーと読むこともできるが、それで一点突破したら豊かな細部がすべて台無しになってしまう。やはり、なじみの薄い古代の思想や生活などの背景に若干の説明を加えるのみで、あえてロジカルな物語展開を無視し、幽玄さをスポイルせず、そのまんま描くしかないのかもしれない。現代的な作品にはなりようもなくなるが、原作のすばらしさを活かすにはそれがいちばんだ。しかし、なんとも惜しい素材だと思う。

カテゴリー: アニメ, 宗教, 書籍, 雑記   パーマリンク

コメントは受け付けていません。