アニメ『フルメタル・パニック! The Second Raid』の6話「エッジ・オブ・ヘヴン」を見た。脚本・絵コンテ・演出はここで何度か書いてる山本寛さん。
20秒ほどもある長回しで、灰色の髪をした女性が、原画2枚の軽い上下動をくり返し、呼吸をしているだけのカットがよかった。画面の外にいる、尋問をうけた男性が重要な情報を漏らすセリフが延々とつづいているので、退屈はさせないだろうが、演出的にはかなり危険なカットだ。
ふつうアニメーションでは日常的な呼吸は省略する。一枚の止め絵だったとしても、描かれた人物は生きているもの、呼吸もしているもの、と見なされる。ところがその省略のせいで、たとえば横たわっている人が死んでいるのか、寝ているのか、気絶しているだけなのか、区別がつかない。生死の境があいまいなアニメーションは、生死をはっきり区別させるために、食事をしたり、寝起きをしたりと、生きている人間の生理現象をことさら描きたがる特徴がある。この回の後半、散髪しているときの記号的な「うたた寝の呼吸」がいい例だろう。
20秒の長回しでわずかな呼吸をくり返すカットは、そういう記号的な呼吸とは一線を画する。アニメーションの慣例をくつがえすという意味で貴重な面白いカットだし、同じ理由で危険なカットだとも思う(前例がないわけではないが)。実を言うと、わたしもはじめは微妙な上下動がなにを意味しているのかわからなかった。三回くらい見たところでようやく「あ、呼吸をしているのか!」と気づいた。
このカットで、演出はなにかを表現したがっている。危険をおかしてまで表現したいなにかがある。しかし、そのなにかはよくわからない。このカットの後、場所が提督の部屋へ移り、灰色髪の女性のうしろの壁に深いブルーの空の絵が飾ってある。そこでもなにかを表現したがっているが、やはりよくわからないままだ。原作のライトノベルには、そのなにかが明確に文章化されているんだろう。おそらくそれは、小説的にはOKだけど、アニメーション的にはNGだったなにかなのだ、と勝手に想像している。
ほかにも散髪シーンや鏡面の主題など、この回には見どころがたくさんあった。興味のある方にはオススメできる。