死につつある人のふるまい

 他者の死とどう向き合うべきか。人間じゃなくてペットという場合もあるだろうが、生きている人が他者の死と誠実に向き合おうとしたとき、なにができるのか。

 あれこれ考えたが、「忘れないこと」これに尽きる、と結論した。人は生きている以上、どんどん忘れていく。しかし、あらゆる瞬間にその人のことを思い出し、忘れないように努める。もっと言えば、その人の死を受け入れないことかもしれない。その人のこころやからだが永遠にもどらない事実をありえない不条理のように感じ、その人のいないこれからの時間をつねに喪失感とともに生きる。

 たとえばその人のにおい、たたずまい、口癖やよく聴いていた音楽など、さまざまな事柄が、不意に目の前にあらわれ、その人のことを思い出せ思い出せ、と迫ってくる。つらいだろうが、逃げずに思い出す。耐え難い喪失感に襲われることもあるだろう。覚悟のいることだ。葬式でわんわん泣いて、翌日はすっきりと日常を取りもどした方がどんなにか楽だろう。

 しかし誠実に向き合うとは、こういうことなのではないか。いまのわたしはそう思う。忘れていくもの、つまり死んでいくものを必死に食いとめることができるのは、生きている人だけなのだから。

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