没義道でなく

 いまの手帳はかなり長く使っているが、買ったばかりのころ野良犬手帳にしようと考えていた。

 たぶん「ヘブンズパスポート」に対抗して考えたんだと思う。いいことしたらシールをひとつ貼って100枚たまるといいことがある、みたいなパスポート。対する野良犬手帳は、野良犬を見つけたらシールを貼る。

 きったない犬も、少し前までは飼われていただろうと思われる犬も、足のない犬も、すでに死んでる犬も、見つけたら同じシールを一枚だけ貼る。シールが100枚たまったら、どこかの空き地でひっそりと燃やす。

 野良犬に思いをはせたりしない。ただ燃やすだけ。

 自分で犬を飼うようになって、野良犬手帳にシールを貼るのをやめた。余計な感傷が入ってしまうとダメになると思ったのだ。

 野良犬とともにある無常観。

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